大きな地震を体験した人の中には、「最初に小さな揺れが来て、一瞬静かになったあと、本当に恐ろしい揺れが来た」という感覚を覚えている人が少なくありません。阪神・淡路大震災でも、高槻や京都など比較的震源から距離のある地域では、“先に来た揺れ”と“本震のような大揺れ”を別々に感じたという証言が多くあります。これは、地震波の種類の違いによって起こる現象です。この記事では、縦波(P波)と横波(S波)の違い、距離による時間差、そして実際に身を守る余裕がどれほどあるのかを、中学理科レベルからわかりやすく整理します。
地震には「先に届く波」と「後から届く波」がある
地震が起きると、地下では複数の種類の波が発生します。
| 波の種類 | 特徴 | 速さ |
|---|---|---|
| P波(縦波) | 最初に届く小さな揺れ | 速い |
| S波(横波) | 大きく強い揺れ | 遅い |
P波は地面を押したり引いたりするような揺れで、比較的細かく短い振動です。
一方、S波は横方向へ大きく揺らすため、建物被害や恐怖感の原因になることが多いです。
つまり、「最初に来た小さな揺れ」がP波で、その後に来る大きな揺れがS波です。
なぜ「静かな間」ができるのか
P波はS波より速いため、先に到着します。
そのため、
- 最初にP波が来る
- 少し間が空く
- あとからS波が来る
という順番になります。
このP波とS波の到着時間差が、いわゆる「初期微動継続時間」です。
阪神・淡路大震災で感じた「終わったと思ったら、本番が来た」という感覚は、この時間差によるものです。
特に強い地震では、P波だけでもかなり揺れるため、「これが本震だ」と感じてしまうことがあります。
高槻より京都のほうが時間差は長くなるのか
基本的には、震源から遠いほどP波とS波の到着時間差は長くなります。
なぜなら、P波のほうが速く進むため、距離が長いほど両者の差が広がるからです。
イメージとしては、
- P波 → 新幹線
- S波 → 在来線
のようなものです。
近距離では差が小さくても、遠距離になるほど差が開きます。
そのため、高槻よりさらに震源から遠い京都では、理論上は「静かな間」は多少長くなります。
ただし、実際には地盤や建物の揺れ方によって体感はかなり変わります。
阪神・淡路大震災ではP波も非常に強かった
阪神・淡路大震災は都市直下型地震だったため、震源に近い地域ではP波の時点で既に強い揺れがありました。
そのため、多くの人が、
「もう終わった」と思った直後に、本当に危険なS波が来た
と証言しています。
これは教科書的な「小さい揺れ→大揺れ」という単純なイメージより、現実の地震がはるかに複雑で恐ろしいことを示しています。
P波で横波に備えるのは実際難しい?
結論から言うと、かなり難しいです。
理由は主に3つあります。
1. 人は最初の揺れを判断できない
日常では、P波だけを単独で経験することはほとんどありません。
そのため、最初の揺れを感じても、
- 小さい地震かもしれない
- トラックかもしれない
- すぐ終わるかもしれない
と考えてしまいます。
2. 時間差が短い
震源が近い直下型地震では、P波とS波の差は数秒程度しかないこともあります。
そのため、「考えてから行動する」余裕はほとんどありません。
3. 強いP波自体で混乱する
大地震では、P波だけでもかなり恐怖を感じます。
「これ以上強くなる」と予測するのは、実際には非常に難しいです。
緊急地震速報はこの時間差を利用している
現在の緊急地震速報は、このP波とS波の速度差を利用しています。
先に観測されたP波を解析し、
- どこで地震が起きたか
- どれくらい大きいか
- S波がいつ来るか
を予測して警報を出しています。
つまり、人間が感覚だけで判断するのは難しいため、機械による高速解析が必要になっているのです。
「静寂の間」は実際に存在する感覚だった
大地震を経験した人の証言には、「一瞬静かになった」という表現がよくあります。
これは心理的錯覚だけではなく、実際にP波とS波の間に相対的な“空白感”が生まれることがあります。
特に、
- 遠距離
- 深発地震
- 広域地震
では、その差を比較的感じやすくなります。
ただし、都市直下型では差が短く、現実には「気づいた時には大揺れ」というケースも多いです。
まとめ
地震で感じる「最初の小さな揺れ」と「後から来る大揺れ」は、P波(縦波)とS波(横波)の違いによるものです。
P波のほうが速いため、先に到着し、その後に強いS波が来ます。
震源から遠いほど、この時間差は長くなるため、高槻より京都のほうが、理論上は“静かな間”を長く感じやすくなります。
しかし実際の大地震では、P波自体も強く、人間が冷静に「これは前触れだ」と判断するのはかなり困難です。
現在の緊急地震速報は、このP波とS波の時間差を利用して、少しでも早く警報を出す仕組みになっています。


コメント