この滴定の問題では、クロム酸カリウム(K2CrO4)を指示薬として、塩化カリウム(KCl)水溶液に含ませ、硝酸銀(AgNO3)水溶液で滴定を行い、Ag2CrO4の沈殿が現れた時点を終点としています。終点で加えたAgNO3の体積は50mLです。
滴定の化学反応式
反応は以下の通りです。
Ag⁺ + Cl⁻ → AgCl(s) (先に塩化銀が沈殿)
2Ag⁺ + CrO4²⁻ → Ag2CrO4(s) (指示薬の沈殿)
滴定誤差の発生要因
クロム酸イオンは塩化銀の沈殿が飽和状態に達してから沈殿します。つまり、実際の沈殿開始時点で既に少量のAg⁺が過剰になっており、Ag2CrO4の沈殿が見えるまでに必要なAg⁺量がわずかに多くなります。これが滴定誤差です。
クロム酸銀の溶解度積を用いた計算
Ag2CrO4の溶解度積は Ksp = [Ag⁺]²[CrO4²⁻] です。0.10 M KCl中では、AgClが先に沈殿しているため、[Ag⁺]は塩化銀の共通イオン効果により約1.33×10⁻⁵ Mとなります。
したがって、クロム酸銀の沈殿開始時のクロム酸イオン濃度は [CrO4²⁻] = Ksp / [Ag⁺]² ≈ 1.1×10⁻⁶ M となります。
滴定誤差の体積換算
原液のクロム酸イオン濃度は 2.0×10⁻³ M です。50 mL水溶液中のクロム酸イオン量は n = 0.050 × 2.0×10⁻³ = 1.0×10⁻⁴ mol。
終点での実際のクロム酸イオン残存量は 0.050 × 1.1×10⁻⁶ ≈ 5.5×10⁻⁸ mol です。従って、滴定誤差による過剰AgNO3量は 2 × 5.5×10⁻⁸ ≈ 1.1×10⁻⁷ mol です。
これを体積に換算すると V = n / C = 1.1×10⁻⁷ / 0.10 ≈ 1.1 μL です。非常に微小な誤差であることが分かります。
まとめ
今回のK2CrO4-AgNO3滴定では、終点のAg2CrO4の視認にはわずかなAg⁺過剰が必要で、その結果の滴定誤差はごく微小(約1 μL)です。実務上は無視できるレベルですが、正確な計算や高精度分析ではこの誤差を考慮することが重要です。


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