森鴎外の小説『阿部一族』において、橋谷が「最後に好う笑わせてくれた」と言う場面が登場します。このシーンで彼が笑った理由、そして家来のセリフ「しまいの四つだけは聞きましたが、総体の桴数は分かりません」に対して何が和やかにさせたのかを考察します。
橋谷が笑った理由
「最後に好う笑わせてくれた」というセリフは、橋谷が精神的な重圧から解放される瞬間を描いています。橋谷の笑いは、単なる喜びや楽しさからくるものではなく、状況の矛盾や無理から来る軽い滑稽さに反応したものです。この笑いは、話し手の言葉や行動から生まれる微妙な皮肉や状況のズレに対する反応として理解できます。
家来のセリフの背景
家来が言った「しまいの四つだけは聞きましたが、総体の桴数は分かりません」という言葉には、漢詩の形式や詩的な韻律に関連した暗示が込められています。これは、詩を完全に理解していないが、いくつかの部分については知識があるということを示しています。この不完全さが、全体の文脈において和やかな雰囲気を生み出しているのです。
和やかさの要素
「総体の桴数」という表現は、ある意味で「わからない」ということを素直に認めることで、緊張感がほぐれ、会話にリラックスした空気をもたらしています。人間関係において、相手が自分の無知を隠さずに素直に表現することが、しばしば和やかな雰囲気を作り出すことがあります。これが、橋谷の笑いを引き出した要因の一つと考えられます。
まとめ
『阿部一族』における橋谷の「笑い」は、単に楽しい瞬間を描くのではなく、状況の矛盾や不完全さを反映させた深い意味を持っています。家来の言葉には、完璧でないことを許容することで生まれる安心感があり、それが最終的に橋谷の笑いを引き出したのです。このシーンは、物語における人間関係の微妙な調整とその温かさを象徴しています。


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