アルミダイキャストの製造現場では、「充填時間(ちゅうてんじかん)」が製品の品質と生産効率を大きく左右します。厚み3mm、縦200×横400×高さ60mmのアルミ箱で充填時間が0.1秒と聞くと、一瞬すぎて驚かれる方も多いでしょう。しかし、この数値はダイキャスト業界では決して珍しいものではありません。この記事では、その理由と背景を解説します。
アルミダイキャストの充填時間とは?
アルミダイキャストにおける充填時間とは、溶けたアルミが金型内に流し込まれ、型のすみずみまで行き渡るまでの時間を指します。一般的に、ダイキャストでは高速・高圧で金型に金属を射出するため、充填時間は非常に短く、0.01〜0.2秒程度が標準とされています。
この短時間で金属を流し込む理由は、金属が固まり始める前に型全体に均一に行き渡らせるためです。流動性が落ちると、巣(す)やヒケ、未充填といった欠陥が生じやすくなります。
0.1秒という充填時間は早いのか?
結論から言えば、0.1秒の充填時間はアルミダイキャストの中では「一般的な速さ」に該当します。むしろ、製品形状や肉厚が3mm程度であれば、このくらいのスピードで充填しなければ品質を維持できない場合もあります。
例えば、厚みが薄く広い形状(今回のような箱型構造)では、アルミの流れが途中で冷えて固まらないように、高速で一気に充填する必要があります。これが「高速射出」と呼ばれる技術です。
高速充填を可能にするダイキャストマシンの仕組み
ダイキャストマシンでは、「射出ピストン」と呼ばれる装置が溶融アルミを金型内に押し込む役割を担っています。このピストンの動作速度は非常に速く、秒速1〜5m程度で動作します。そのため、製品が大きくても充填時間は一瞬で完了します。
また、射出条件(圧力・速度・金型温度など)は製品設計ごとに最適化されており、単に速さを求めるのではなく、品質と強度を両立させるために精密に制御されています。
特別な技術が使われている可能性は?
0.1秒という数値自体は珍しくありませんが、メーカーによってはより高品質な充填を実現するために独自の制御技術を使っている場合もあります。例えば、近年では「サーボ射出制御」や「真空ダイキャスト法」を組み合わせることで、空気の巻き込みを防ぎつつ、安定した充填を行う技術が一般化しています。
これにより、短時間であっても気泡の少ない高品質な鋳造が可能になり、自動車部品や精密機器のケースなどに多く採用されています。
他の事例:充填時間と製品形状の関係
例えば、厚みが1mm以下の精密部品では0.02〜0.05秒ほどで充填されることもあり、逆に大型部品では0.15〜0.3秒程度かかることもあります。つまり、充填時間は製品の大きさ・形状・肉厚・材料温度などによって最適値が決まるということです。
今回のケース(3mm厚、200×400mm)で0.1秒というのは、むしろ理想的な速度範囲に入っていると考えられます。
まとめ
アルミダイキャストにおける充填時間0.1秒は、特別な技術を使っているというよりも、標準的な製造条件の一つです。高速充填は、アルミの流動性を保ちながら欠陥を防ぐために欠かせないプロセスであり、多くのダイキャストメーカーで採用されています。むしろ、0.1秒で充填できているということは、金型設計や射出制御が非常に適切に行われている証拠といえるでしょう。


コメント