微分方程式系の安定性を調べるための手法の一つに、リャプノフ関数を用いる方法があります。リャプノフ関数は、システムの安定性を評価するために非常に効果的なツールであり、特に定常点(この場合は0点)の安定性を分析する際に用いられます。今回は、与えられた微分方程式系について、リャプノフ関数を使って0の安定性を調べる方法について解説します。
1. 微分方程式系の設定
まず、問題に示された微分方程式系は以下のように表されます。
- dx/dt = -y + a x(x^2 + y^2)
- dy/dt = x + a y(x^2 + y^2)
ここで、aは定数であり、(x, y)は状態変数です。このシステムは、xy平面での動きとして表され、安定性解析にはリャプノフ関数を使用します。
2. リャプノフ関数の選定
リャプノフ関数を選ぶ際には、システムのエネルギー的な意味を考慮することが一般的です。ここでは、以下のリャプノフ関数を選びます。
V(x, y) = x^2 + y^2
この関数は、原点(0, 0)を基準とした距離の2乗であり、システムのエネルギーに関連するため、安定性の解析に有効です。
3. リャプノフ関数の導関数の計算
次に、リャプノフ関数V(x, y)の時間変化を調べます。リャプノフ関数の時間変化は、次のように計算されます。
dV/dt = (∂V/∂x)(dx/dt) + (∂V/∂y)(dy/dt)
V(x, y) = x^2 + y^2 に対して、偏微分を計算すると。
- ∂V/∂x = 2x
- ∂V/∂y = 2y
したがって、dV/dtは次のようになります。
dV/dt = 2x(dx/dt) + 2y(dy/dt)
ここで、dx/dtとdy/dtは与えられた微分方程式系から次のように代入できます。
dV/dt = 2x(-y + a x(x^2 + y^2)) + 2y(x + a y(x^2 + y^2))
この式を展開すると。
dV/dt = -2xy + 2a x^2(x^2 + y^2) + 2xy + 2a y^2(x^2 + y^2)
すると、xyの項は相殺され、次のように整理できます。
dV/dt = 2a (x^2 + y^2)^2
4. 安定性の判定
dV/dt = 2a (x^2 + y^2)^2 が常に0以上であることがわかります。したがって、dV/dtは非負であり、原点(0, 0)での安定性は、リャプノフ関数V(x, y)が増加することがないことから確定できます。
具体的には、a > 0 の場合、dV/dtは正であり、エネルギーが増加することから、原点は不安定です。逆に、a < 0 の場合、dV/dtは負であり、エネルギーが減少するため、原点は安定となります。
5. まとめ
リャプノフ関数V(x, y) = x^2 + y^2を用いて、微分方程式系の0点(原点)の安定性を調べることができました。結果として、aの符号によって原点が安定か不安定かが決まることがわかりました。具体的には、a > 0の場合は不安定、a < 0の場合は安定です。この方法を使うことで、より複雑な非線形システムの安定性を解析することができます。


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