なぜ南米西岸には海岸砂漠があり、北米西岸にはないのか?気候学的な仕組みを解説

気象、天気

世界の気候を学ぶ上で、南北アメリカ大陸の西海岸は興味深い比較対象となります。どちらも寒流が沿岸を流れているにもかかわらず、南米にはアタカマ砂漠のような海岸砂漠が存在し、北米にはそのような規模の海岸砂漠がありません。その違いの理由を理解することで、地球規模の気候メカニズムを深く知ることができます。

寒流と海岸気候の基本

南米西岸にはフンボルト海流、北米西岸にはカリフォルニア海流という寒流が流れています。寒流は海水温を下げ、上空の空気を冷やすことで雲の形成を促進する一方、地表への降水は抑えられる特徴があります。これが沿岸地域の乾燥化の一因です。

ただし、寒流の存在だけでは砂漠の有無を決定づけることはできません。その他の地理的・気象的要因も組み合わさって結果が分かれるのです。

南米西岸に海岸砂漠ができる理由

南米西岸に広がるアタカマ砂漠は「世界で最も乾燥した場所」とも呼ばれています。その要因は複合的です。

  • アンデス山脈の存在:東からの湿った空気はアンデス山脈に阻まれ、太平洋沿岸にはほとんど到達しません(雨陰効果)。
  • フンボルト海流による乾燥化:冷たい海流が雲を発生させますが、降水はほとんどなく霧となって沿岸に留まります。
  • 高気圧帯の影響:南太平洋高気圧が安定的に位置し、上昇気流が発生しにくい環境をつくります。

これらの要素が重なり、南米西岸には大規模な海岸砂漠が形成されているのです。

北米西岸に砂漠がない理由

一方、北米西岸にはカリフォルニア海流が流れているものの、南米のような大規模砂漠はありません。その理由には以下の点があります。

  • ロッキー山脈との距離:ロッキー山脈はアンデスほど太平洋沿岸に近くなく、湿気の遮断効果が弱い。
  • 中緯度偏西風:北米西岸は偏西風の影響を強く受け、海からの湿気が内陸に入りやすい。
  • 緯度の違い:北米西岸は南米西岸に比べ緯度が高く、温帯性の気候が形成されやすい。

そのため、乾燥地帯は内陸部(ネバダ州やユタ州など)に広がり、沿岸には地中海性気候や温帯性気候が形成されています。

実例で比較:アタカマ砂漠とカリフォルニア州

アタカマ砂漠では年間降水量が数mmに満たない地域もあり、NASAが火星探査機の試験地に選ぶほどの乾燥地です。

一方、カリフォルニア州西岸は同じ寒流の影響を受けつつも、ロサンゼルスなどでは冬季に一定の降雨が見られ、農業も盛んに行われています。

まとめ

南北アメリカの西海岸はいずれも寒流の影響を受けますが、山脈の位置、風の流れ、緯度、高気圧帯の影響などの違いが組み合わさることで、南米には海岸砂漠が形成され、北米には形成されないという差が生まれます。つまり、寒流という共通点の背後には、地理的条件の違いが大きな役割を果たしているのです。

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