ケイリーの公式の証明:行列木定理を用いた別アプローチ

数学

ケイリーの公式は、ラベル付き頂点 n 個からなる完全グラフにおける全ての木(生成木)の数が nn−2 であることを示す、美しい定理です。この記事では、ダブルカウント以外の方法として、行列木定理(Matrix-Tree Theorem)を用いた証明をわかりやすく紹介します。

ケイリーの公式とは

ケイリーの公式は、次のように表されます。

n 頂点からなるラベル付き完全グラフ Kn に含まれる生成木(スパニングツリー)の数は nn−2 本である。

この公式は、ネットワーク理論やアルゴリズム、分子構造の計算など、さまざまな分野で応用されています。

行列木定理とは

行列木定理とは、任意のグラフに対し、隣接関係を表すラプラシアン行列のある小行列式(cofactor)を使って、そのグラフのスパニングツリーの数を求める方法です。

グラフ G のラプラシアン行列 L を定義し、L の任意の 1 行・1 列を削除して得られる小行列の行列式(determinant)が、G のスパニングツリーの総数になります。

Kn に対するラプラシアン行列

完全グラフ Kn では、各頂点は n−1 個の頂点と接続しています。したがって、ラプラシアン行列 L は次のような構造になります。

Lij
i = j n − 1
i ≠ j −1

このような行列は「センター化された全1行列」と呼ばれ、固有値解析がしやすい形式です。

行列式の計算とケイリーの公式への導出

L の任意の 1 行・1 列を削除した小行列は、(n−1)×(n−1) の行列になります。この行列の固有値は。

  • 0(重複度1)
  • n(重複度 n−1)

削除により 0 の固有値が除かれるため、残った行列の行列式は nn−2 になります。これにより、Kn のスパニングツリーの総数がケイリーの公式 nn−2 に一致することが示されます。

他の証明法との比較

ダブルカウンティングや Prüfer コードを使った証明も存在しますが、行列木定理は代数的なアプローチであり、構造を深く理解したい方にとって非常に有用です。また、任意のグラフに拡張可能な点も強みです。

たとえば Prüfer コードでは、木構造から一意のコード列を生成し、その逆も可能であることを示すことで nn−2 通りの対応を構築します。こちらは組合せ的アプローチです。

まとめ

ケイリーの公式は、複数の証明方法が存在する数学的にも魅力的な定理です。この記事では、ダブルカウントではなく、行列木定理を用いて代数的に公式を導出しました。少し高度な線形代数の知識は必要ですが、グラフ理論の理解を一層深める助けになるはずです。

他のアプローチと併せて学ぶことで、ケイリーの公式の本質にさらに近づけるでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました