線形代数において、行列やベクトルに関する証明問題は、抽象的な概念を理解するために重要なステップです。今回の問題では、n次元ベクトルa(→)と任意のn次列ベクトルbに関する条件を基に、a(→)がゼロベクトルであることを示すことが求められています。本記事では、この証明の思考プロセスを詳細に解説し、問題の意図と解答に至るまでの手順を明確にします。
問題の設定
問題文によると、n次行ベクトルa(→)は、任意のn次列ベクトルbに対してa(→)b=0を満たすとされています。この条件から、a(→)=0(→)を示さなければなりません。このような問題では、ベクトルの性質や内積の定義に基づいて証明を進めていきます。
問題の核心は、ベクトルa(→)がすべての列ベクトルとの内積がゼロであることから、a(→)がゼロベクトルであることを導き出す点にあります。
証明のステップ
まず、a(→)を標準基底ベクトルeiに沿った線形結合で表現します。すなわち、a(→) = Σj a_j e_j という形です。ここで、a_jはa(→)の各成分です。
次に、問題の条件から、任意のn次列ベクトルbに対してa(→)b = 0が成り立つことが分かります。具体的には、標準基底ベクトルeiを使って、各成分に対する内積を計算します。
0 = a(→)e_i = a_i
これにより、a_i = 0であることが分かります。すなわち、すべての成分a_iがゼロであるため、a(→) = 0(→)となります。このことが証明の本質です。
思考プロセスと意図
この証明で重要なのは、a(→)を基底ベクトルeiに展開することです。これにより、a(→)がゼロベクトルであることを成分ごとに確認することができます。最初にこのような展開を思いつかない場合、内積の性質を利用するというアプローチは重要です。
また、最初に「自明に見える」と感じた部分も、実際には内積の基本的な定義や線形性を理解するための練習問題として非常に有効です。これを理解することで、他の線形代数の問題に対しても応用できる知識を得ることができます。
他の方法での証明
この証明では、ベクトルの成分表示を使いましたが、別の方法として、行列を用いた表現を使っても同様の結果が得られます。行列の線形変換を考えると、a(→)がゼロであるための条件を別の視点から理解することもできます。
具体的には、a(→)b = 0がすべてのbに対して成り立つということは、a(→)が行列の零空間に含まれることを意味します。これにより、a(→)は零ベクトルでなければならないことが分かります。
まとめ
今回の問題では、a(→)b = 0が成り立つ場合、a(→)がゼロベクトルであることを証明しました。この証明では、標準基底ベクトルに基づいてa(→)を展開し、内積の性質を利用することでa(→)の各成分がゼロであることを確認しました。このアプローチは、線形代数の理解を深めるための重要なステップとなります。
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