無線通信では、信号が建物や地面などで反射することによって、受信信号の振幅や位相が時間的に変化するフェージングが発生します。特にレイリーフェージングチャネルでは、受信信号の包絡線がレイリー分布に従うため、AWGN(加法性白色ガウス雑音)環境とは異なるビット誤り率特性を示します。本記事では、レイリーフェージング環境における同期検波BPSKと直交同期検波BFSKのビット誤り率の導出方法、および平均CNRに対する特性について解説します。
レイリーフェージングチャネルの基本モデル
レイリーフェージングでは、送信信号が複数経路を通って受信され、それぞれの経路の位相がランダムに変化することで、受信信号の振幅が変動します。
受信信号は一般的に次のように表されます。
r(t)=h(t)s(t)+n(t)
ここで、s(t)は送信信号、h(t)はフェージング係数、n(t)は白色ガウス雑音を表します。レイリーフェージングでは、h(t)の振幅はレイリー分布に従います。
瞬時CNRをγとすると、その確率密度関数は次式で表されます。
p(γ)=1/γ̄ exp(-γ/γ̄)
ここでγ̄は平均CNRを表します。
レイリーフェージング下におけるBPSK同期検波のBER導出
BPSKでは、2つの位相状態0とπを利用して情報を伝送します。同期検波を行う場合、AWGN環境での瞬時BERは次式になります。
P_b(γ)=Q(√(2γ))
ただし、Q(x)はガウスQ関数です。
レイリーフェージング環境では、瞬時CNRが変動するため、平均BERは瞬時BERをCNR分布で平均化します。
P_b=∫₀∞Q(√(2γ))p(γ)dγ
この積分を解くと、レイリーフェージング下でのBPSK同期検波の平均ビット誤り率は次式になります。
P_b=1/2(1-√(γ̄/(1+γ̄)))
この式から、CNRが高くなるほどBERは低下しますが、AWGN環境と比較するとフェージングによる劣化が発生することが分かります。
レイリーフェージング下におけるBFSK同期検波のBER導出
直交同期検波BFSKでは、2つの互いに直交する周波数信号を利用して情報を伝送します。
AWGN環境における同期検波BFSKの瞬時BERは、BPSKと同様に次式で表されます。
P_b(γ)=Q(√(2γ))
レイリーフェージング環境では、BPSKの場合と同様にCNR分布について平均化します。
P_b=∫₀∞Q(√(2γ))p(γ)dγ
したがって、直交同期検波BFSKの場合も平均BERは以下になります。
P_b=1/2(1-√(γ̄/(1+γ̄)))
ただし、実際の比較では信号エネルギーの定義やCNRの設定方法によってBPSKとの差が生じます。一般的には、同じエネルギー条件ではBPSKの方が若干優れた誤り率特性を示します。
BPSKとBFSKの特性比較
レイリーフェージング環境では、低CNR領域では両方式とも大きな誤り率になります。これは、フェージングによって信号振幅が大きく低下する瞬間が発生するためです。
一方、高CNR領域ではBPSKの方が効率よくエネルギーを利用できるため、BFSKより低いBERを実現できます。
比較すると、以下のような傾向になります。
| 方式 | 特徴 |
|---|---|
| BPSK同期検波 | 高い電力効率を持ち、高CNRで優れたBER特性 |
| 直交同期検波BFSK | 周波数直交性により復調が容易だが、同一条件ではBPSKより劣る |
平均CNR -10〜40dBでのBER曲線の特徴
横軸を平均CNR[dB]、縦軸をBERとして特性曲線を描く場合、平均CNRは以下のように変換します。
γ̄=10^(CNR[dB]/10)
-10dBから40dBまで変化させると、低CNR領域ではBERは0.1以上の高い値になりますが、CNRの上昇に伴って徐々に低下します。
ただし、レイリーフェージングでは高CNRにしてもAWGNのように急激には改善せず、フェージングによる誤りの床(BERフロア)が現れることがあります。
グラフを作成する場合は、横軸をCNR[dB]、縦軸をBERの対数目盛として、-10dBから40dBまで計算した値をプロットすると、通信方式ごとの違いを比較しやすくなります。
まとめ|レイリーフェージングではBPSKとBFSKの性能差が現れる
レイリーフェージングチャネルでは、受信信号の振幅変動によって通信品質が低下します。BPSK同期検波および直交同期検波BFSKのBERは、瞬時CNRに対するBERをレイリー分布で平均化することで求められます。
平均BERは一般的に、1/2(1-√(γ̄/(1+γ̄)))の形となり、CNRの増加に伴って低下します。
特性曲線では、BPSKは電力効率の高さからBFSKより良好なBER特性を示し、レイリーフェージング環境では単純なCNR向上だけでなく、ダイバーシティや誤り訂正などの対策も重要になります。


コメント