OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)と単一搬送波方式は、どちらも同じ変調方式を用いて同じビットレートを実現できますが、周波数の使い方には大きな違いがあります。特にOFDMは、複数のサブキャリアを直交配置することで、高い周波数利用効率やマルチパス環境への耐性を得られる方式として、無線LANやLTE、5Gなどで広く利用されています。この記事では、サブキャリア数N=8の場合を例に、両方式の周波数スペクトルの違いと、OFDMがどの程度優れているのかを解説します。
OFDM方式と単一搬送波方式の基本的な違い
単一搬送波方式では、1つの搬送波に対して情報を乗せて送信します。例えばBPSK変調の場合、1つの搬送波の位相を0度または180度変化させることで1ビットの情報を表現します。
一方、OFDMでは高速なデータ列を複数の低速なデータ列に分割し、それぞれを異なる周波数のサブキャリアへ割り当てます。N個のサブキャリアを利用する場合、1つの広帯域信号をN個の狭帯域信号として同時送信することになります。
例えばN=8の場合、OFDMでは8本のサブキャリアを利用して同時にデータを送ります。各サブキャリアは互いに直交しているため、周波数が重なっていても干渉せずに復調できます。
N=8の場合のOFDMの周波数スペクトル
OFDMの特徴は、サブキャリア同士を直交配置する点にあります。一般的な周波数間隔をΔfとすると、8個のサブキャリアは以下のように配置されます。
f1、f2、f3、f4、f5、f6、f7、f8の8つの周波数成分があり、それぞれの間隔は一定のΔfになります。各サブキャリアのスペクトルはsinc関数状になり、隣接するサブキャリアのピーク位置で他のサブキャリアのスペクトルがゼロになるため、干渉が発生しません。
簡単に表すと、N=8のOFDMスペクトルは以下のようになります。
サブキャリア1:中心周波数 f1
サブキャリア2:中心周波数 f1+Δf
サブキャリア3:中心周波数 f1+2Δf
…
サブキャリア8:中心周波数 f1+7Δf
このように8つのスペクトルが一部重なりながら配置されるため、各信号を離して配置する方式よりも狭い帯域で通信できます。
単一搬送波方式の周波数スペクトル
単一搬送波方式では、同じビットレートを送る場合、OFDMのように複数のサブキャリアへ分割することはありません。
例えばBPSKで同じ速度のデータを送信すると、1つの搬送波に高速なシンボル列を載せる必要があります。そのため、シンボル速度が高くなり、必要な帯域幅も広くなります。
単一搬送波のスペクトルは1つの大きな帯域を持つ形になり、OFDMのように複数の狭帯域サブキャリアへ分割された形にはなりません。
つまり、同じ情報量を送る場合でも、OFDMは周波数軸上で効率的に信号を配置できる点が大きな違いです。
OFDMは単一搬送波方式より周波数利用効率が高いのか
結論から言うと、理想的な条件ではOFDMと単一搬送波方式の周波数利用効率はほぼ同等です。OFDMだから単純に8倍効率が良くなるというわけではありません。
OFDMの優位性は、サブキャリアを重ねて配置できることによる帯域利用の効率化にあります。もし単一搬送波方式で同じ帯域を確保する場合、ガードバンドなどの余分な周波数領域が必要になります。
OFDMでは直交性を利用するため、隣接するサブキャリア間に大きな余白を設ける必要がありません。そのため、実際のシステムでは単一搬送波方式より高い周波数利用効率を実現できます。
N=8の場合にどの程度優れているか
N=8のOFDMでは、8つのサブキャリアを密接に配置できます。単一搬送波方式で同じ8倍のデータ量を送ろうとすると、広い帯域幅が必要になります。
ただし、周波数利用効率そのものはサブキャリア数Nに比例して8倍になるわけではありません。OFDMの利点は、サブキャリア数を増やすことでガードバンドの割合を小さくできることにあります。
例えば、単一搬送波方式で各信号間に10%のガード帯域が必要だった場合、OFDMでは直交配置によってその余分な帯域を大幅に削減できます。その結果、実用システムでは数十%程度の帯域効率向上が期待されます。
OFDMが実用通信で優れている理由
OFDMが単なる周波数利用効率だけでなく、多くの通信システムで採用される理由は、マルチパス環境に強いことです。
無線通信では建物や地面から反射した複数の電波が受信点に到達します。この遅延によって単一搬送波方式ではシンボル間干渉が発生しやすくなります。
OFDMでは各サブキャリアのシンボル速度を低くできるため、1シンボルの時間を長くできます。さらにガードインターバル(CP:サイクリックプレフィックス)を付加することで、遅延波の影響を抑えることができます。
例えば都市部のように反射波が多い環境では、単一搬送波方式よりOFDMの方が安定した高速通信を実現しやすくなります。
まとめ|OFDMは帯域効率と通信品質で優位性を持つ
OFDMと単一搬送波方式を比較すると、理論上の周波数利用効率は大きく変わりません。しかし、OFDMはサブキャリアを直交配置することでガード帯域を削減でき、実際の通信システムでは高い周波数利用効率を実現できます。
N=8の場合でも、OFDMが8倍優れるということではなく、無駄な周波数領域を減らせることが主なメリットです。
さらにOFDMはマルチパス耐性や柔軟な周波数割り当てなどの利点があり、現在の無線通信では単一搬送波方式より実用面で優れた方式として利用されています。


コメント