音楽で使われる音階には、自然倍音の関係を利用した「純正律」と、1オクターブを12等分した「平均律」があります。一見すると、理論的には異なる方法で決められた音程なのに、実際の音の高さがかなり近いことに気付きます。
なぜ12等分という人工的な方法で作った平均律が、自然界の倍音をもとにした純正律に近い値になるのでしょうか。この現象は単なる偶然なのか、それとも音響学的な理由があるのかを見ていきます。
純正律と平均律は音の決め方が違う
純正律とは、音同士の周波数比を単純な整数比に合わせることで、美しく響く音程を作る方法です。例えば、完全五度は2つの音の周波数比を3:2にすると非常に協和した響きになります。
これは自然界に存在する倍音の仕組みと関係しています。弦や管などが振動すると、基本周波数だけでなく2倍、3倍、4倍といった整数倍の周波数成分が発生し、それらの組み合わせが人間に心地よく感じられるためです。
一方、平均律は1オクターブを12個の半音に均等分割する考え方です。隣り合う音の周波数比を常に同じにするため、どの調でも同じように演奏できるという利点があります。
12平均律が純正律に近くなる理由
12平均律では、1オクターブの周波数比である2を12回に分けます。つまり半音1つの比率は「2の12乗根」で決められます。
計算すると、半音の比率は約1.05946になります。この値を積み重ねることで、各音の周波数が決まります。
例えば、ドからソまでの完全五度は平均律では約1.4983倍になります。一方、純正律の完全五度は1.5倍です。差はわずか約0.11%しかありません。
平均律が純正律に近いのは数学的な理由がある
12平均律が純正律に近い大きな理由は、人間が音楽で重要視してきた音程が、もともと比較的単純な周波数比で表されるものだったからです。
特に完全五度の比率である3:2は非常に重要です。12回の五度上昇を繰り返すと、音の高さは7オクターブ分に近づきます。
数学的には、3の12乗と2の7乗が非常に近い値になることが関係しています。3の12乗は531441、2の19乗は524288で、その差はありますが、人間の耳で実用上許容できる程度に小さい差です。
完全な一致ではなく「近似」が音楽を成立させている
重要なのは、平均律が純正律を完全に再現しているわけではないという点です。実際には、平均律の各音は純正律の音程から少しずつずれています。
例えば、平均律の長三度は純正律の長三度より少し高くなります。そのため、純正律で和音を鳴らした場合と平均律の楽器で鳴らした場合では、響きに違いがあります。
ただし、そのずれが小さいため、多くの場合は人間の耳には自然に感じられます。もし12等分した結果が純正律から大きく外れていたなら、現在のような平均律の音楽文化は成立しなかったでしょう。
なぜ1オクターブを12分割したのか
音楽では昔から、オクターブ関係の音が非常に強く結びついて感じられてきました。オクターブは周波数比が2:1であり、倍音構造の中でも最も基本的な関係です。
そのオクターブをできるだけ自然な音程関係を保ちながら分割する方法として、12等分は非常に優れたバランスを持っていました。
5分割や7分割など他の方法も数学的には可能ですが、主要な音程である五度や三度を十分近い値にできる点で、12平均律は実用性が高かったのです。
平均律は人間が自然音を利用して作った音律
純正律と平均律の関係は、「偶然近くなった」というよりも、人間が自然界の音の性質を利用して作り上げた結果と考えることができます。
自然倍音が生み出す美しい比率を基準にしながら、どの音から始めても演奏できるよう数学的に調整したものが平均律です。
つまり平均律は自然音から離れた人工的な仕組みではなく、自然界の音響法則と人間の音楽的な要求の間で生まれた妥協点と言えます。
まとめ|純正律と平均律が近いのは偶然ではない
純正律と平均律の音程が近い理由は、単なる偶然ではありません。人間が心地よいと感じる音程が、自然界の倍音構造や単純な整数比に基づいているためです。
12平均律は、完全な純正律ではありませんが、重要な音程を大きく外さず、あらゆる調で演奏できるように数学的に設計された音律です。
自然界の音響現象と数学的な性質がうまく組み合わさった結果として、12平均律は現在の音楽で広く使われるほど優れた仕組みになっています。


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