犬の肥満細胞腫では、腫瘍部分を強く触った後に急に赤く腫れたり、かゆみや炎症が起こったりすることがあります。また、場合によっては胃潰瘍など消化管のトラブルにつながることもあります。
これらの症状には、肥満細胞腫の細胞から放出される生理活性物質が関係しています。この記事では、犬の肥満細胞腫で見られる反応の原因となる物質や、その作用について分かりやすく解説します。
犬の肥満細胞腫とはどのような腫瘍なのか
肥満細胞腫は、肥満細胞という免疫に関係する細胞が腫瘍化して発生する病気です。犬では皮膚にできる腫瘍の中でも比較的多く見られ、体のさまざまな場所に発生する可能性があります。
肥満細胞は本来、体内に侵入した異物から身を守る役割を持っています。その過程で炎症やアレルギー反応に関係する物質を放出しますが、肥満細胞腫では腫瘍細胞が大量の物質を放出することがあります。
そのため、腫瘍そのものの大きさだけでなく、腫瘍から放出される物質によって全身的な症状が出る場合があります。
腫瘍を触ると赤く腫れる原因はヒスタミン
犬の肥満細胞腫で、腫瘍を刺激した後に周囲が赤く腫れる現象にはヒスタミンという物質が大きく関係しています。
肥満細胞にはヒスタミンを含む顆粒が存在しており、腫瘍を強く触ったり刺激したりすると、細胞からヒスタミンが放出されます。
ヒスタミンには血管を広げたり、血管から水分を漏れ出させたりする作用があります。その結果、腫瘍周辺の皮膚が赤くなったり、腫れたり、熱を持ったように見えることがあります。
肥満細胞腫で胃潰瘍が起こる仕組み
肥満細胞腫では、ヒスタミンが大量に放出されることで胃や十二指腸にも影響を及ぼすことがあります。
ヒスタミンは胃の壁細胞に作用し、胃酸の分泌を促進します。胃酸が過剰になると胃粘膜が傷つきやすくなり、胃炎や胃潰瘍につながる可能性があります。
例えば、肥満細胞腫が大きい犬や悪性度が高い場合では、腫瘍から多くのヒスタミンが放出され、食欲低下、嘔吐、黒い便(消化管出血による黒色便)などの症状が見られることがあります。
ヒスタミン以外に関係する肥満細胞由来の物質
肥満細胞腫による症状には、ヒスタミン以外の物質も関与しています。
| 物質 | 主な作用 |
|---|---|
| ヒスタミン | 血管拡張、腫れ、かゆみ、胃酸分泌促進 |
| ヘパリン | 血液凝固を抑える作用 |
| プロスタグランジン | 炎症や痛みに関与 |
| サイトカイン | 免疫反応や炎症反応を調節 |
特にヒスタミンとヘパリンは肥満細胞の顆粒に多く含まれており、肥満細胞腫で問題となる代表的な物質です。
ただし、すべての肥満細胞腫で同じ量の物質が放出されるわけではなく、腫瘍の性質や悪性度によって症状の出方は異なります。
肥満細胞腫の犬で注意したい症状
肥満細胞腫がある犬では、腫瘍部分だけでなく全身状態にも注意する必要があります。
- 腫瘍を触った後に急に赤く腫れる
- 腫瘍の大きさが急に変化する
- 嘔吐や食欲低下がある
- 黒い便が出る
- 元気がなくなる
特に、腫瘍を刺激した後に大きく腫れる場合は、肥満細胞から物質が放出されている可能性があります。必要以上に触ったり揉んだりすることは避け、動物病院で相談することが大切です。
肥満細胞腫の治療では放出物質への対策も行われる
肥満細胞腫の治療では、腫瘍そのものへの治療だけでなく、ヒスタミンによる影響を抑える目的で薬が使用されることがあります。
代表的なものとして、抗ヒスタミン薬や胃酸分泌を抑える薬などがあります。これらは腫瘍から放出された物質による症状を軽減する目的で使用されます。
例えば、手術前後や悪性度の高い肥満細胞腫では、腫瘍からのヒスタミン放出による合併症を防ぐために、獣医師が状態に応じた管理を行います。
まとめ|犬の肥満細胞腫による赤い腫れや胃潰瘍にはヒスタミンが関係する
犬の肥満細胞腫で、腫瘍を触った後に赤く腫れたり、胃潰瘍が起こったりする主な原因は、肥満細胞から放出されるヒスタミンです。
ヒスタミンは血管や胃酸分泌に影響を与えるため、皮膚の腫れだけでなく消化管の症状を引き起こすことがあります。また、ヘパリンや炎症関連物質など、複数の物質も症状に関係しています。
肥満細胞腫は見た目だけでは判断できないことも多いため、腫瘍の変化や犬の体調に気になる点がある場合は、早めに獣医師へ相談することが重要です。


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