単相トランスの無負荷試験・短絡試験では、それぞれ「無負荷損(鉄損)」と「負荷損(銅損)」を求めますが、その計算式の意味を正しく理解できていないと混乱しやすいポイントがあります。本記事では、なぜ①や②の式になるのか、またそれぞれにRI²を使ってはいけない理由を整理して解説します。
無負荷試験と短絡試験の目的の違い
まず前提として、無負荷試験と短絡試験はそもそも測っている対象が異なります。
無負荷試験は「鉄損(ヒステリシス損・渦電流損)」を求める試験です。一方で短絡試験は「銅損(巻線抵抗による損失)」を求める試験です。
この違いを理解していないと、電圧・電流・力率の扱いを誤ってしまいます。
無負荷試験での損失の正しい考え方
無負荷試験では一次側に定格電圧を加え、二次側は開放されています。
このとき流れる電流は励磁電流であり、非常に小さいため、巻線抵抗による損失(RI²)はほぼ無視できます。
そのため入力電力はほぼ鉄損に等しく、式としては「P0 = V I cosθ」で表されます。
ここで重要なのは、このcosθが“無負荷時の力率”であり、RI²を使う対象ではないという点です。
短絡試験で銅損を求める理由
短絡試験では二次側を短絡し、一次側に低電圧を加えて定格電流を流します。
このとき鉄心の磁束は非常に小さくなるため鉄損は無視でき、ほぼ銅損のみが発生します。
したがって損失は「Psc = R I²」で表され、巻線抵抗によるジュール損がそのまま測定されます。
なぜ無負荷試験にRI²を使うと誤りになるのか
無負荷試験でも巻線抵抗によるRI²損失は存在しますが、励磁電流が非常に小さいため極めて小さく、実務上は無視できるレベルです。
そのため無負荷試験の入力電力にRI²を含めると、むしろ鉄損を正しく評価できなくなります。
また、無負荷試験の主目的は鉄損の測定であり、銅損を正確に求める場ではありません。
鉄損と銅損の整理と試験の本質
トランス損失は大きく分けて鉄損と銅損に分かれます。
鉄損は電圧依存、銅損は電流依存という性質があり、試験条件を変えることでそれぞれを分離して測定しています。
無負荷試験=鉄損優勢、短絡試験=銅損優勢という構造を押さえることが重要です。
まとめ
無負荷試験では入力電力=鉄損としてV I cosθで評価し、RI²は基本的に無視します。
短絡試験では鉄損を無視できるため、RI²で銅損を評価します。
つまり両試験は「どちらの損失を主役として抽出しているか」が本質であり、式の使い分けはその結果に過ぎません。


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