加群論において、元に対して「それを打ち消す環の元」を集めた集合はAnn(m)として知られています。一方で、その逆方向、すなわち環の元を固定したときにそれを打ち消す加群の元の集合についても自然な対応物が存在します。
本記事では、その集合が数学的にどのように理解され、一般にどのような名称で呼ばれるのかを整理します。
問題設定の整理:Ann(m)とは何か
Aを可換環、MをA加群とするとき、m∈Mに対してAnn(m)は次のように定義されます。
Ann(m) = { a∈A | am = 0 }
これは「元mを消す環の元全体」であり、イデアルを形成します。
逆方向の集合:{ m∈M | am = 0 }
質問の対象は、固定したa∈Aに対して次の集合です。
{ m∈M | am = 0 }
これはMの部分集合であり、Mの構造に関して閉じています。
この集合の一般的な名前
この集合は一般に「aによる消去部分集合」あるいは「aの核(kernel)」として理解されます。
特に写像として考えると、加群準同型
φ_a : M → M, m ↦ am
の核(kernel)そのものです。
したがって標準的には
Ker(φ_a)
と表現されます。
構造的な意味:加群としての性質
この集合Ker(φ_a)はMの部分加群になります。
理由は、am=0を満たす元の集合は加法・スカラー倍で閉じているためです。
これは線形代数における「線形変換の核」と完全に同じ構造です。
Ann(m)との対応関係
Ann(m)が「mを固定してaを集める」のに対し、この集合は「aを固定してmを集める」構造です。
つまり環と加群の作用を左右反転させた双対的な概念と見ることができます。
この対応は加群論における基本的な双対性の一つです。
具体例での理解
例えばA=ℤ、M=ℤとし、a=2とすると
{ m∈ℤ | 2m=0 } = {0}
一方でa=0ならば
{ m∈ℤ | 0·m=0 } = ℤ
このようにaの性質によって核の大きさが大きく変わります。
まとめ
固定したa∈Aに対してam=0となるm全体は、加群準同型m↦amの核として理解されます。
一般にはKer(φ_a)と呼ばれ、Mの部分加群を成します。
Ann(m)と対になる構造として、加群論の基本的な対応関係の一つです。


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