トランスインピーダンスアンプ(TIA:Transimpedance Amplifier)は、入力電流を出力電圧に変換する回路としてフォトダイオードや各種センサー回路で広く利用されています。しかし、一般的な電圧増幅器とは異なり、ゲインの単位や計算方法が特殊なため混乱しやすい回路でもあります。本記事では、トランスインピーダンスアンプのゲインの考え方と、フィードバック抵抗1.9kΩ・入力電流±5mAの具体例について解説します。
トランスインピーダンスアンプのゲインとは
通常のオペアンプ回路では、ゲインは「出力電圧÷入力電圧」で表されるため無次元数となります。
一方、トランスインピーダンスアンプは入力が電流、出力が電圧であるため、ゲインは次のように定義されます。
トランスインピーダンスゲイン = 出力電圧 ÷ 入力電流
単位はV/Aとなり、オーム(Ω)と同じ次元になります。
基本式はフィードバック抵抗そのもの
理想的なトランスインピーダンスアンプでは、出力電圧は次の式で求められます。
Vout = -Iin × Rf
ここで、Rfはフィードバック抵抗です。
つまり、トランスインピーダンスゲインは次のようになります。
Gain = Vout / Iin = -Rf
そのため、フィードバック抵抗が1.9kΩの場合、トランスインピーダンスゲインは-1900V/Aとなります。
1.9kΩ・±5mAの場合の出力電圧
質問の条件で計算してみます。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| フィードバック抵抗 | 1.9kΩ |
| 入力電流 | ±5mA |
| トランスインピーダンスゲイン | -1900V/A |
出力電圧は次のようになります。
Vout = -0.005A × 1900Ω = -9.5V
入力が+5mAなら出力は-9.5V、入力が-5mAなら出力は+9.5Vとなります。
したがって、出力レンジは約±9.5Vです。
「ゲイン1900倍」と言ってよいのか
電子回路の会話では「ゲイン1900」と表現されることがありますが、厳密には少し注意が必要です。
トランスインピーダンスアンプの1900は電圧増幅率ではなく、1900Ωの電流-電圧変換係数を意味します。
例えば入力が1mAなら1.9V、10μAなら19mVになるという意味であり、「1900倍の電圧増幅」とは異なります。
そのため設計資料やデータシートでは通常「1.9kV/A」「1.9kΩ TIA Gain」などと表記されます。
実際の回路で考慮すべきポイント
実際の回路では理想計算だけではなく、オペアンプの電源電圧や出力スイングも確認する必要があります。
例えば±5V電源のオペアンプで±9.5Vの出力を要求すると飽和してしまいます。
また、高速動作が必要な場合はフィードバックコンデンサを追加して安定化することも一般的です。
フォトダイオード用途では寄生容量の影響により、単純な抵抗だけでは発振するケースもあります。
まとめ
トランスインピーダンスアンプのゲインは、一般的な電圧増幅率ではなく「出力電圧÷入力電流」で定義されます。理想的にはゲインはフィードバック抵抗と等しく、1.9kΩならトランスインピーダンスゲインは-1900V/Aです。入力電流が±5mAの場合、出力電圧は約±9.5Vとなります。したがって『ゲインは1900になる』という表現は概ね正しいものの、厳密には『1900Ωのトランスインピーダンスゲイン』と理解するのが適切です。


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