PASのSOG機能を学んでいると、「需要家側で短絡事故が起きて電力会社側が先に遮断したら、PASは停電しているのにどうやって開放するのか?」という疑問にぶつかります。これは高圧受電設備を理解するうえで非常に重要なポイントです。この記事では、SOG付きPASが電源喪失時でもどのように動作するのか、その内部構造や保護協調の考え方まで整理して解説します。
PASとSOGの基本役割
まず、PASは「Pole Air Switch(柱上気中開閉器)」であり、需要家設備を高圧配電線から切り離すための装置です。
そこへSOG(地絡・過電流継電器機能)が加わることで、事故検出と自動開放が可能になります。
主な目的は以下です。
- 波及事故防止
- 事故区間の自動切り離し
- 配電線保護
特に高圧受電設備では、需要家事故を配電系統へ広げないことが非常に重要です。
疑問になる「停電後どうやって開放するのか」
多くの人が疑問に感じるのがここです。
需要家側で短絡事故が起きると、大電流が流れます。
その結果、電力会社側のOCRや配電用遮断器が先に動作し、配電線が停電することがあります。
すると、
「PASも停電して電源が無いのに、どうやって開放するの?」
という疑問が生まれます。
実際には「事故検出→トリップ」は非常に高速
結論から言うと、SOGは停電する前の瞬間に動作しています。
短絡事故発生時には、事故電流が瞬時に流れます。
この電流をCT(変流器)が検出し、SOG制御装置へ信号を送ります。
その後、
- 事故電流検出
- SOG判断
- トリップ信号出力
- PASトリップコイル動作
という流れが数サイクル〜数十ミリ秒レベルで進行します。
つまり、完全停電する前に既に開放命令は出されているのです。
PASは「蓄勢機構」で開放する
ここが構造上の重要ポイントです。
PASはモーターで直接接点を押し開くわけではありません。
内部にはあらかじめスプリングエネルギーが蓄えられています。
普段の状態
投入状態では、内部スプリングが開放動作できる状態で待機しています。
事故時
トリップコイルが励磁されると、ラッチ(機械的ロック)が外れます。
スプリング解放
蓄勢された力で高速開極します。
つまり、実際の開放エネルギー源は「電源」ではなく「機械的蓄勢エネルギー」なのです。
では制御電源は何をしているのか
SOG制御電源は主に、
- 事故検出
- 判断回路動作
- トリップコイル励磁
を行っています。
必要なのは一瞬の電力だけです。
そのため、停電直前のわずかな時間で十分動作可能です。
さらに、機種によっては内部コンデンサや制御用補助電源を持つものもあります。
電力側遮断後に開放するケースもある
一部では、「配電線停電後にPASが開放したように見える」ことがあります。
これは以下の理由による場合があります。
- 機械動作の遅れ
- 配電遮断器との時限協調
- 再閉路方式との協調
特に配電線では、自動再閉路(リクローザ)が使われることがあります。
一時事故なら送電復帰しますが、需要家事故ならPASを開放して需要家だけ切り離します。
この協調がSOGの大きな役割です。
「無電圧でも開く」のではない
ここは誤解されやすい点です。
PASは完全停電後にゼロから動力を作って開いているわけではありません。
正確には、
停電前の瞬間に事故検出とトリップが完了し、機械エネルギーで開放している
という理解になります。
高圧設備で重要な「保護協調」
高圧設備では、どの装置が先に動くかを細かく調整しています。
| 装置 | 役割 |
|---|---|
| SOG付きPAS | 需要家事故切り離し |
| 電力会社OCR | 配電線保護 |
| VCB | 受電設備保護 |
| リクローザ | 自動再送電 |
これらが連携して、できるだけ広範囲停電を防いでいます。
まとめ
PASのSOG機能は、需要家側短絡事故時にCTで事故電流を瞬時検出し、停電前のわずかな時間でトリップ信号を発生させています。
その後は、内部の蓄勢スプリング機構によって接点を高速開放します。
つまり、PASは「停電後に新たな電源で動く」のではなく、
- 事故検出は瞬時実行
- トリップは停電前に完了
- 実際の開放は機械エネルギー
という構造で動作しています。
この仕組みを理解すると、高圧受電設備の保護協調や波及事故防止の考え方も見えやすくなります。


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