お酒を飲まない人が全員アルコール分解酵素を持っていないわけではありません。アルコールの分解に関わる酵素には遺伝的な個人差があり、日本人の中でも体質によっては酵素活性が低い、あるいはほとんど働かないタイプが存在します。そこで本記事では、日本人におけるアルコール分解酵素の遺伝的な特徴と、その割合についてわかりやすく解説します。
アルコール分解と酵素の仕組み
アルコールを摂取すると、体内ではまずアルコール脱水素酵素(ADH)が働き、飲んだアルコールをアセトアルデヒドという中間代謝物に変えます。その後、アセトアルデヒドを分解して無害にするのがアルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)です。
このALDH2は遺伝的に活性が高いタイプと低いタイプがあり、低いタイプはアセトアルデヒドが体内に残りやすく、顔が赤くなったり動悸や気分不快が出やすいという特徴があります。こうした反応はいわゆる「お酒に弱い体質」として知られています。
日本人でのALDH2遺伝子の割合
研究によると、日本人集団ではALDH2遺伝子の変異型(ALDH2*2)を持つ人が比較的高い割合で見られます。標準的なタイプ(ALDH2*1/*1)を持つ人は全体の約57%前後で、変異を1コピー持つ(*1/*2)人が約40%、変異を2コピー持つ(*2/*2)人が約3%と報告されています。つまり、ALDH2の活性が低いまたはほとんどないタイプは合わせて日本人の約40%以上とされています。([参照]Alcohol‑induced respiratory reactions)
この割合は欧米など他の人種と比べても非常に高く、東アジア人特有の遺伝的特徴としてよく知られています。ALDH2変異を持つ人は顔が赤くなる「フラッシング反応」を起こしやすく、飲酒習慣や健康リスクにも影響を与えるとされています。
飲酒習慣と分解酵素の関係
アルコール分解酵素の遺伝的な違いは、飲酒の快適さや習慣にも影響します。活性が低いタイプの人は不快感が強く出るため、自然と飲酒量が少なくなる傾向があります。逆に酵素活性が高い人は比較的高い量を飲んでも不快感が出にくいため、飲酒が習慣化する可能性もあります。
ただし、酵素の有無だけが飲酒習慣を決めるわけではなく、生活習慣や環境、習慣化などの要因も大きく影響します。例えば、酵素を持っていても体調や薬の影響で分解が遅くなることもあります。
世代や性別による違い
一般的にALDH2の変異は男女や世代ごとに大きな差はありませんが、飲酒傾向や文化的背景と相まって、実際の飲酒行動は個人差が大きいです。若い世代では飲酒習慣が多様化しているため、遺伝的な体質と習慣の関係を自分なりに理解することが大切です。
まとめ
日本人におけるアルコール分解酵素(ALDH2)の変異型を持つ人は、およそ40%以上と考えられています。全く酵素を持たない人(変異型ホモ接合)はごく少数ですが、活性が低いタイプが多いことは日本人の飲酒文化や体質を理解するうえで重要です。
したがって、日本人で分解酵素を持たない・弱い体質の人が1割以上いると聞いた場合、それは十分あり得るといえるでしょう。一方で「お酒を飲まない=酵素を持たない」ではなく、体質や遺伝的背景を理解して自分に合った飲酒判断を行うことが大切です。


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