AlイオンとCaイオンに過剰のアンモニア水を加えたとき、Al(OH)₃は沈殿するのにCa(OH)₂はほとんど生じないのはなぜか――この違いは、アンモニアの塩基性の強さと水酸化物の溶解度積(Ksp)の違いで説明できます。本記事では、反応式と平衡の観点から整理します。
アンモニア水は「弱塩基」である
アンモニアは水中で次の平衡をとります。
NH₃ + H₂O ⇄ NH₄⁺ + OH⁻
この反応の塩基解離定数(Kb)は小さく、生成するOH⁻濃度は強塩基(NaOHなど)よりずっと低いのが特徴です。つまり、アンモニア水は「OH⁻を少しだけ供給する溶液」です。
Al³⁺は少量のOH⁻でも沈殿しやすい
Al³⁺は電荷が3+と大きく、水酸化物の溶解度積Kspが非常に小さいため、少量のOH⁻でもすぐに沈殿が生じます。
反応式は次の通りです。
Al³⁺ + 3OH⁻ → Al(OH)₃↓
Al(OH)₃は白色沈殿として生成します。必要なOH⁻濃度が低いため、弱塩基であるアンモニア水でも十分に沈殿が生じます。
Ca²⁺はOH⁻濃度が足りない
一方、Ca²⁺の場合はどうでしょうか。
Ca²⁺ + 2OH⁻ → Ca(OH)₂
Ca(OH)₂の溶解度積はAl(OH)₃よりはるかに大きく、沈殿させるにはより高いOH⁻濃度が必要です。
しかしアンモニア水は弱塩基なので、Ca(OH)₂を十分に沈殿させるだけのOH⁻濃度を供給できません。そのため、ほとんど沈殿が見られないのです。
溶解度積の違いを比較
| 物質 | Kspの傾向 | 沈殿のしやすさ |
|---|---|---|
| Al(OH)₃ | 非常に小さい | 少量のOH⁻で沈殿 |
| Ca(OH)₂ | 比較的大きい | 高いOH⁻濃度が必要 |
「過剰のアンモニア水」でも起こらない理由
「過剰」といっても、アンモニアは弱塩基です。量を増やしても平衡の関係でOH⁻濃度は限界があります。
そのため、強塩基(NaOHなど)を加えた場合とは挙動が異なります。
ポイントは“量”ではなく“塩基の強さ”なのです。
まとめ
Al³⁺ではAl(OH)₃が沈殿し、Ca²⁺ではCa(OH)₂ができにくい理由は、アンモニア水が弱塩基であることと、両水酸化物の溶解度積の差にあります。
Al(OH)₃は非常に溶けにくいため少量のOH⁻で沈殿しますが、Ca(OH)₂はより高いOH⁻濃度を必要とするため、アンモニア水では十分な沈殿が生じません。
沈殿の有無は「金属イオンの性質」と「溶解度積」「塩基の強さ」の組み合わせで決まることを理解すると整理しやすくなります。


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