アドラー心理学を学ぶ上で、ワーカホリックと幸福についての議論は深いものがあります。特に『嫌われる勇気』では、ワーカホリックが「人生の嘘」をついている状態にあるとされる一方で、「いま、ここ」を生きることで幸福を感じることができるとも語られています。この矛盾に関しての理解を深めるために、アドラー心理学の観点からこの問題を掘り下げていきましょう。
ワーカホリックと「人生の嘘」
『嫌われる勇気』で語られる「ワーカホリック」は、仕事を避けるために他の生活の側面—特に人間関係や愛情—から目を背けているとされています。この状態は、「人生の嘘」をついているとされ、自己実現を求めることなく、他人との関わりを避けることによって現実逃避していると考えられています。
アドラー心理学において、幸福とは他者との協力や関係を築くことによって得られるものです。したがって、ワーカホリックが仕事に逃げることは、アドラーの言う意味での「自己実現」から遠ざかることになります。自己を避け、他者とのつながりを無視している状態は、アドラーが目指す幸福とは対極にあるように見えます。
「いま、ここ」を生きるとはどういうことか
一方で、アドラー心理学では「いま、ここ」を真剣に生きることが幸福の鍵であるとされています。これは過去の失敗や未来への不安から解放され、現在の瞬間に焦点を合わせて生きることです。ワーカホリックの人物も「いま、ここ」を生きることで、自己の存在に価値を見出し、一定の幸福を感じていると解釈されます。
この考え方は、過去や未来の評価から解放され、仕事を通じて充実感や目的を感じることができるという点では理にかなっています。仕事が「いま、ここ」の瞬間で自分の存在を実感できる手段となる場合、それが幸福感に繋がることは理解できます。
矛盾の解消:幸福とワーカホリックのバランス
では、なぜワーカホリックが「幸福」だとされるのでしょうか?それは、彼が「いま、ここ」を生きる過程で、他の人間関係を後回しにしているに過ぎないからです。仕事の中で生きがいや充実感を得ることができている場合、その人は「自己実現」を一部達成していると言えます。しかし、これがすべてではなく、アドラー心理学はバランスを重視します。
本書では、ワーカホリックの人物が「いま、ここ」を生きることで一時的に幸福を感じることができている一方で、人生全体のバランスが取れていない点も問題として指摘しています。仕事のタスクのみでは、完全な幸福を得ることは難しく、愛や交友のタスクも重要であることが強調されています。
アドラー心理学における真の幸福とは
アドラー心理学の真の幸福とは、仕事、愛、交友の三つの側面をバランスよく持つことにあります。「いま、ここ」を生きることが大切ではありますが、それが全てではありません。ワーカホリックは一時的に幸福感を得ているかもしれませんが、他の人生の側面が犠牲になっている限り、完全な幸福とは言えません。
真の幸福を得るためには、他者との関係性を深め、仕事以外のタスクにも目を向ける必要があります。このバランスを取ることで、より持続可能で充実した人生を送ることができるのです。
まとめ
アドラー心理学では、「いま、ここ」を生きることが幸福の鍵だとされていますが、ワーカホリックの人物が感じる幸福は一時的であり、完全な幸福とは言えません。仕事に逃げることが人生の「嘘」となるのは、他の重要なタスクを避けているためです。幸福を実現するためには、仕事以外の面でもバランスを取ることが求められます。


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