量子力学における観測可能量AとBの関係を理解することは、システムの性質を探る上で非常に重要です。特に、Aが縮退している場合とBが縮退していない場合に、行列要素が対角型であることを証明する過程は、量子力学の基本的な理解に貢献します。この記事では、この証明の概念とステップをわかりやすく解説します。
量子力学における観測可能量とその性質
量子力学では、物理量(例えば、エネルギーや位置、運動量など)を観測するためには、その物理量に対応する「演算子」を使います。観測可能量AやBは、それぞれ対応する演算子として作用し、システムの状態に関する情報を提供します。
観測可能量Aが縮退している場合、その固有状態は複数の異なる状態が同じ固有値に対応することを意味します。これに対して、観測可能量Bが縮退していない場合、その固有状態は一意的であると考えられます。こうした性質を考慮し、両立する観測可能量の関係を理解することが重要です。
証明の基礎:行列要素の対角型であることの理解
まず、AとBが両立可能な観測量であり、Aの固有状態を|a’,i>、Bの固有状態を|b’>としたとき、次のような関係が成り立ちます。
A|a’,i> = a’|a’,i>、B|b’> = b’|b’>。このとき、行列要素がすべて対角型であることを証明することが目標です。これは、AとBが可換であるため、同じ固有状態を持つという事実に基づいています。
可換演算子と固有状態の関係
量子力学において、観測可能量AとBが両立可能であるとは、これらの演算子が可換であることを意味します。すなわち、[A, B] = AB – BA = 0 という関係が成り立ちます。この可換性により、AとBは共通の固有状態を持つことが保証されます。
共通の固有状態を持つため、AとBの固有状態を|a’,i>および|b’>として、これらの状態が互いに直交していると仮定することができます。この直交性が、行列要素が対角型である理由の一つです。
対角型行列の証明のステップ
次に、行列要素が対角型であることを証明します。まず、AとBの固有状態|a’,i>と|a’,j>を用いて、行列要素を考えます。このとき、AとBが共通の固有状態を持つため、Bの作用は|a’,i>に対して、次のように表せます。
= b’δ(i,j)、ここでδ(i,j)はクロネッカーのデルタ関数です。この関係により、行列要素は対角型であることが分かります。
非縮退状態における証明
AおよびBの両方が縮退していない場合、固有状態は一意的であるため、行列要素も対角型であることがわかります。この場合、AとBの固有状態が一意的であり、状態の重なりがないため、行列要素は必然的に対角型になります。
この証明により、縮退していない場合には、行列要素は常に対角成分を持つことが確認されます。
まとめ
この記事では、両立できる観測可能量AとBに関する証明、特に行列要素が対角型である理由について解説しました。Aが縮退していてBが縮退していない場合、共通の固有状態を持つため、行列要素が対角型になることがわかりました。また、両方の観測量が縮退していない場合でも、行列要素が対角型であることが証明されました。
量子力学の理論は非常に複雑ですが、演算子の可換性と固有状態の性質を理解することで、より深い理解が得られます。
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