2025年の北大化学の問題で「フラーレンは絶縁体なのか、それとも半導体なのか?」と疑問に思った受験生も多いのではないでしょうか。実はこの問いは、物質の電気伝導性をどう定義するかという基本理解がカギになります。本記事ではフラーレンの性質を、バンド理論や電子構造の観点から分かりやすく整理します。
フラーレンとはどんな物質か
フラーレン(代表例:C60)は、炭素原子がサッカーボール状に結合した分子です。
各炭素原子はsp2混成軌道をとり、π電子が存在します。この構造だけを見ると、グラファイトのように電気を通しそうに思えます。
しかし、重要なのは「分子として存在するか」「結晶としてどう配列するか」です。
絶縁体と半導体の違い
物質の導電性は、バンドギャップの大きさで判断されます。
- 金属:バンドギャップなし
- 半導体:小さいバンドギャップ
- 絶縁体:大きいバンドギャップ
一般にバンドギャップが約3eV以上あると絶縁体に分類されることが多いです。
フラーレン結晶(固体C60)はおよそ1.5~2.3eV程度のバンドギャップを持つとされ、本質的には半導体的性質を示します。
なぜ問題で「絶縁体」と扱われることがあるのか
入試問題では、純粋なフラーレンは常温で電気伝導性が非常に低いことから「絶縁体的」と表現される場合があります。
つまり、「電気をほとんど流さない」というマクロな観点で絶縁体と扱われることがあります。
一方で、物理化学的な厳密分類では半導体に近い挙動を示します。
分類は文脈依存であることがポイントです。
ドーピングするとどうなるか
興味深いのは、アルカリ金属(例:K)をドープすると、フラーレンは金属的導電性を示すことです。
例えばK3C60は超伝導を示すことも知られています。
これは分子軌道に電子が供与され、伝導帯が部分的に占有されるためです。
この事実からも、フラーレンは単純な絶縁体とは言えないことが分かります。
まとめ
フラーレン(C60)は厳密にはバンドギャップを持つ分子性結晶であり、物性分類としては半導体に近い物質です。
ただし、純粋状態では導電性が非常に低いため、入試問題では絶縁体的と扱われることがあります。
重要なのは、金属・半導体・絶縁体の違いをバンド理論で理解することです。文脈を踏まえて判断する力が、入試化学では求められます。


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