1級建築士試験の構造力学では、ラーメン構造の崩壊機構に関する問題が頻出です。特に「両端固定なのに、なぜモーメントがゼロとして扱えるのか?」という疑問を持つ受験生は少なくありません。本記事では、崩壊ヒンジが生じたときのモーメント条件について、原理から分かりやすく解説します。
両端固定ラーメンの基本原理
通常、両端固定梁やラーメン構造では、固定端には曲げモーメントが発生します。固定端とは回転が拘束されている支点であり、回転変位がゼロであるため、一般にモーメントはゼロにはなりません。
例えば、単純支持梁では端部モーメントはゼロですが、固定梁では端部に曲げモーメントが発生します。この違いが基本です。
したがって、問題文で「両端固定」とある場合、通常状態では固定端モーメントは存在すると理解するのが正解です。
崩壊ヒンジとは何か
崩壊ヒンジとは、部材が塑性化して回転可能になった点を指します。つまり、その断面の曲げモーメントが全塑性モーメントMpに達した瞬間にヒンジ化します。
重要なのは、崩壊ヒンジが形成された点では、それ以上モーメントが増加しないということです。
塑性ヒンジが形成されると、その断面は回転可能となり、力学的には「ピン支点」と同様に扱われます。したがって、その点の曲げモーメントは一定(=Mp)で、それ以上の抵抗モーメントは発生しません。
A点周りのモーメントがゼロになる理由
解説で「A点周りのモーメントがゼロ」として反力を求めているのは、A点に崩壊ヒンジが形成されたためです。
崩壊ヒンジが生じた点は回転自由となるため、構造解析上はピンと同じ扱いになります。ピン支点では曲げモーメントは伝達されません。
つまり、「固定端だからモーメントはゼロにならない」というのは弾性範囲での話であり、崩壊機構を考える塑性解析では条件が変わるのです。
B・D・E点もモーメントはゼロになるのか
ここが混乱しやすいポイントです。答えは「その点に崩壊ヒンジが形成されていればゼロ(正確にはMp一定)」となります。
崩壊機構では、必要なヒンジ数が形成されたときに構造が機構化します。例えば、ラーメン構造では通常「静定次数+1」個のヒンジができると崩壊します。
したがって、B・D・E点が崩壊ヒンジとして仮定されている場合、それらの点でもモーメントは塑性モーメントに達し、それ以上増加しません。
しかし、ヒンジが形成されていない固定端では、依然としてモーメントは存在します。すべての固定端が自動的にゼロになるわけではありません。
具体例で整理する
例えば、両端固定梁に中央集中荷重が作用する場合を考えます。荷重が増加すると、まず最大曲げモーメント位置で塑性ヒンジが発生します。
さらに荷重が増すと、端部にも塑性ヒンジが形成され、合計3つのヒンジができた瞬間に機構化して崩壊します。
このとき、ヒンジ化した点ではモーメントはMpで一定となり、回転が可能になります。これが「モーメント条件をゼロとして扱う」理由です。
まとめ
両端固定であっても、崩壊ヒンジが形成された点では回転自由となるため、塑性解析上はピン支点と同様に扱われます。そのため、A点に崩壊ヒンジがあるなら、A点周りのモーメント条件を用いて反力を求めることが可能です。
B・D・E点についても、崩壊ヒンジが形成されていれば同様に塑性モーメント一定の条件となります。重要なのは「固定かどうか」ではなく、「塑性ヒンジが形成されているかどうか」です。
1級建築士試験では弾性解析と塑性解析の違いを正確に理解することが合格への鍵となります。


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