PTSD(心的外傷後ストレス障害)については、その定義と診断基準が進化してきましたが、近年、軽度のストレス状況でもPTSDが発症するという考え方が広まり、疑似科学だという意見も見られます。この記事では、PTSDの科学的背景と、なぜ一部で疑似科学とされるのか、その境界線について解説します。
PTSDとは?その定義と科学的背景
PTSDは、戦争や自然災害、事故などの極度なストレスにさらされた後に発症することが多い精神的な疾患です。1980年代にはアメリカ精神医学会がDSM(診断マニュアル)にPTSDを追加し、広く認知されるようになりました。典型的な症状としては、フラッシュバック、回避行動、過覚醒などがあります。
この疾患の診断は、過去に遭遇したトラウマ的な出来事とその後の精神的・身体的な影響を踏まえています。昔は主に戦争体験者に見られるものでしたが、現代では広範囲なストレス状況が関係していることがわかり、より多くの人々に影響を及ぼす疾患として認識されています。
疑似科学としてのPTSDの論争
近年、PTSDが疑似科学だと主張する声もあります。この見解は、軽いパワハラやモラハラでも発症するという報告が増加したことに関連しています。かつては、PTSDは極限的な状況に耐えた人々だけのものと考えられていたため、軽微なストレスでもPTSDが発症するという主張に対して懐疑的な意見が生まれました。
また、鬱病との混同を指摘する声もあります。鬱病は感情の低下や無気力が特徴的ですが、PTSDはトラウマへの過剰反応がメインの症状です。これらの違いを理解しないまま、PTSDの症状が広く認識されることに対する懸念があるのも事実です。
科学的アプローチと心の強さ
心の強さがPTSDの発症にどれだけ関与するかという点は、非常にデリケートな問題です。過去には心の強さがPTSDを避ける要因とされていた時期もありますが、近年の研究では心の強さだけでは説明できないことがわかってきました。心理的な耐性や強さだけでは、トラウマを受けた後の反応を完全には制御できないという現実です。
実際、戦争経験や暴力を受けたことがある人々でもPTSDを発症するわけではなく、個々の生物学的な違いや周囲の支援の有無が発症のリスクを左右します。このように、心の強さだけでなく、生理的な要因や支援体制がPTSDの発症に深く関わっています。
心の健康と社会的背景の影響
PTSDが疑似科学かどうかを議論する前に、現代社会における心の健康に関する背景を理解することが重要です。現代では、過度なストレスや社会的なプレッシャーが心理的な負担を引き起こしやすく、その結果、心的外傷後に発症する症例が増加しています。社会的なストレスや対人関係の問題もPTSDの要因とされています。
また、教育や福祉の発展によって、心の問題に対する認識が高まりました。これにより、かつては認識されなかった症状が医療機関で診断されるようになり、PTSDの定義や範囲も拡大しています。このような背景を理解することが、現代におけるPTSDの理解に不可欠です。
まとめ: 疑似科学か?それとも理解を深めるべきか
PTSDが疑似科学かどうかという論争は、症状の範囲とそれを診断する基準が進化する中で生じています。しかし、PTSDを疑似科学として片付けることは、心の健康に関する認識を深めるチャンスを逃すことにつながりかねません。軽度のストレスで発症する症例が増えている現状では、PTSDの定義や理解を見直すことが、今後ますます重要になります。
そのため、PTSDについての科学的アプローチを深め、疑似科学として否定するのではなく、社会的、心理的、そして生物学的な要因を考慮した理解を広めていくことが大切です。


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