化学平衡における指数と反応式係数が一致する理由|多段階反応で成立する条件とは

化学

化学平衡の式では、反応物や生成物の濃度が化学反応式の係数を指数として表されます。単一反応なら直感的に理解しやすい一方で、多段階反応であっても同じ形が成立する理由に疑問を持つ方は少なくありません。本記事では、化学平衡の基本原理から、多段階反応でも同じ指数関係が現れる理由、そして「ある条件」とは何かについて、物理化学の視点から整理します。

化学平衡式の基本的な考え方

一般に、反応式 aA+bB⇄cC+dD に対して、平衡定数KはK=[C]^c[D]^d/[A]^a[B]^b と表されます。この形は「質量作用の法則」と呼ばれ、平衡状態にある反応系で実験的にも理論的にも確立されています。

重要なのは、この式が「反応速度式」から直接導かれているわけではなく、平衡状態における熱力学的な性質、特に自由エネルギー変化に基づいて定義されている点です。

多段階反応でも指数が係数に一致する理由

実際の化学反応の多くは、単一段階ではなく複数の素反応から成り立っています。それにもかかわらず、全体の反応式に対して同じ形の平衡定数が得られるのは、平衡定数が「経路に依存しない状態量」だからです。

各素反応に平衡定数K1,K2,…が定義できる場合、全体反応の平衡定数Kはそれらの積として表されます。このとき、各中間体は相殺され、最終的に全体反応式の係数だけが指数として残ります。

鍵となる熱力学的背景

化学平衡はギブズ自由エネルギー変化ΔGによって記述され、ΔG=ΔG°+RTlnQ が成り立ちます。平衡状態ではΔG=0となり、Q=Kが導かれます。

このΔG°は反応経路に依存せず、初期状態と最終状態のみで決まるため、多段階反応であっても全体反応式に基づくKが一意に定まります。これが、指数が反応式係数に一致する本質的な理由です。

「ある条件」とは何を指すのか

多段階反応で平衡定数が反応式通りに書けるためには、各段階が可逆であり、全体として熱力学的平衡に達している必要があります。どこかの段階が不可逆であったり、定常状態に留まっている場合、この単純な形は成立しません。

また、理想気体や理想溶液として扱えること、活量が濃度で近似できることも暗黙の条件です。高濃度系や強い相互作用がある場合には、活量係数を考慮する必要があります。

具体例で考える多段階反応

例えば A⇄B、B⇄C という二段階反応を考えると、それぞれの平衡定数をK1=[B]/[A]、K2=[C]/[B]と書けます。このとき全体反応A⇄Cの平衡定数はK=K1×K2=[C]/[A]となります。

このように、中間体Bは数式上で消去され、全体反応式の係数だけが残るため、指数が反応式係数と一致する結果が得られます。

まとめ

化学平衡において、濃度の指数が化学反応式の係数に一致するのは、平衡定数が熱力学的状態量であり、反応経路に依存しないためです。多段階反応であっても、すべての段階が可逆で平衡に達していれば、全体反応に対して同じ形の平衡式が成立します。「ある条件」とは、熱力学的平衡、可逆性、そして活量近似が成り立つ理想的条件を指していると理解すると整理しやすくなります。

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