ダーリントンペアとインバーテッドダーリントン(Sziklaiペア)の回路設計における高周波特性の違いについて解説します。特に、なぜインバーテッドダーリントン回路の方が高周波特性(fT)が優れているのか、またその理由について掘り下げてみましょう。
1. ダーリントンペア回路の基本構造と特性
ダーリントンペア回路は、2つのトランジスタを直列に配置し、1つ目のトランジスタのコレクター端子を2つ目のトランジスタのエミッタに接続することで、入力インピーダンスを大きくし、増幅能力を向上させる回路です。しかし、この構造にはいくつかの高周波特性に関する問題点が存在します。
2. インバーテッドダーリントン回路の基本構造と特性
インバーテッドダーリントン回路(Sziklaiペア)は、ダーリントンペアと似た構造ですが、トランジスタの順番が逆になっており、入力側がNPNトランジスタ、出力側がPNPトランジスタになります。これにより、回路の利得特性や高周波特性が改善されることがあります。
3. 高周波特性における違いの理由
ダーリントンペアでは、1つ目のトランジスタのコレクター-ベース間容量(Cbe)が2つ目のトランジスタに増幅され、これが低周波特性を向上させる一方で、高周波特性においては悪影響を与えることがあります。特に、Cbeの影響により、fT(転送周波数)が低下しやすいです。
一方、インバーテッドダーリントン回路では、トランジスタの配置が異なるため、Cbeが回路内で増幅される影響が小さくなり、結果的に高周波特性が改善され、fTが高くなります。このため、Sziklaiペアは高周波用途において有利な回路設計となります。
4. 実際の使用例と回路設計の選択
どちらの回路設計を選択するかは、使用する周波数帯域や増幅の必要性によって決まります。低周波の増幅が求められる場合はダーリントンペアが有利ですが、高周波での性能が重視される場合はインバーテッドダーリントン回路(Sziklaiペア)を選ぶ方が適切です。
5. まとめ
ダーリントンペアとインバーテッドダーリントン(Sziklaiペア)回路の高周波特性の違いは、主にトランジスタの配置とそれによるCbeの影響に起因します。インバーテッドダーリントン回路は、Cbeの影響を抑えることにより、高周波特性を改善し、fTが高くなるため、特に高周波回路において有利な選択となります。


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