宇宙について調べていると、「宇宙が生まれてすぐの姿は見えるのに、なぜビッグバンそのものは見えないの?」と疑問に思う人は多いでしょう。ここでは、難しい数式を使わずに、できるだけ直感的にこの疑問を解きほぐしていきます。
宇宙を見るとは「過去を見る」こと
まず大切なのは、私たちが宇宙を見るとき、実は「今」ではなく「過去」を見ているという点です。光は一瞬で届くわけではなく、秒速約30万kmという決まった速さで進みます。
例えば、太陽の光は地球に届くまで約8分かかります。つまり私たちは、太陽の8分前の姿を見ているのです。同じ理屈で、遠くの銀河を見るほど、より昔の宇宙の姿を見ていることになります。
ビッグバン直後の宇宙までは見える理由
現在観測できる最も古い宇宙の姿は、「宇宙背景放射」と呼ばれる光です。これはビッグバンから約38万年後に放たれた光で、今でも宇宙全体に広がっています。
それ以前の宇宙は非常に高温・高密度で、光が自由に進めませんでした。例えるなら、濃い霧の中では遠くが見えないのと同じです。霧が晴れた瞬間から先は見えるけれど、それ以前の様子は直接見ることができない、というイメージです。
なぜビッグバンその瞬間は見えないのか
ビッグバン直後の宇宙は、光さえも進めないほど高温で、物質と光が混ざり合った状態でした。そのため「見るための光」が存在できなかったのです。
つまり、ビッグバンの瞬間を見られない理由は、望遠鏡の性能不足ではなく、「そもそも見るための情報(光)が存在しない」からだと言えます。
もし見えるとしたら、ビッグバンの前は見られる?
では、もし将来もっとすごい観測技術ができたら、ビッグバンの前は見られるのでしょうか。結論から言うと、現在の物理学では「ビッグバンの前」を直接見ることはできないと考えられています。
なぜなら、時間と空間そのものがビッグバンとともに始まったと考えられているからです。「宇宙ができる前」は、「北極より北はどこか?」と聞くのに似ていて、そもそも意味を持たない可能性があるのです。
科学者たちは宇宙の始まりをどう考えているか
現在の研究では、「ビッグバン以前にも何かがあったかもしれない」という理論も存在します。例えば、宇宙が繰り返し生まれ変わるという説や、別の宇宙が存在するという考え方です。
ただし、これらはまだ仮説の段階であり、観測によって確かめられてはいません。科学は「観測できること」を重視するため、確実に言えるのはビッグバン以降の宇宙についてまでです。
まとめ:見えないのは不思議ではない
ビッグバンの瞬間が見えないのは、宇宙の仕組み上とても自然なことです。私たちは光を通して宇宙を見ていますが、その光が存在し始めた時点より前は、直接観測できません。
それでも、人類は理論や観測を組み合わせて、宇宙の始まりにかなり近いところまで理解を進めてきました。見えないからこそ想像が広がり、宇宙は今も多くの人を惹きつけ続けているのです。


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