インバーテッドダーリントン回路でFMMT491とFMMT593を使用する理由

インバーテッドダーリントン回路（Sziklaiペア）で使用されるトランジスターは、その特性に応じて選ばれます。特にFMMT491（NPN）とFMMT593（PNP）のペアが使用される理由について、回路設計者がどのような考慮をしているのかを解説します。耐圧や動作の安定性にどのような影響があるのか、具体的な背景を探ります。

1. インバーテッドダーリントン回路とは？

インバーテッドダーリントン回路は、高い電流増幅率を提供するために、NPNとPNPのトランジスターを組み合わせて使用する回路です。この回路は、通常のダーリントン回路とは異なり、出力インピーダンスの低さやスイッチング速度の速さを提供するため、高周波アプリケーションにも適しています。

そのため、精密な電流制御が必要なシステムや、より高い安定性が求められる場面で使われることが多いです。

2. FMMT491とFMMT593の選定理由

FMMT491はNPNトランジスターであり、FMMT593はそのペアとなるPNPトランジスターです。通常、FMMT491にはFMMT591がペアとして選ばれることが一般的ですが、なぜ耐圧の高いFMMT593が選ばれるのでしょうか？

その理由は、出力電圧や回路の耐障害性を考慮したものです。FMMT593は、FMMT591に比べて高い耐圧（Vceo）が特徴であり、過電圧やスパイクに強く、より安全に動作することができます。これにより、回路全体の信頼性や耐久性が向上します。

3. 出力電圧が5V程度でも高耐圧が選ばれる理由

出力電圧が5V程度であれば、理論的には耐圧が高いトランジスターを選ぶ必要はないように思えます。しかし、実際には回路における動作や電源の変動、負荷変動などによって、瞬間的な過電圧が発生することがあります。

そのため、耐圧の高いFMMT593を使用することで、これらの予期しない瞬間的な電圧スパイクに対しても安全に動作させることができ、回路の安定性が増すのです。

4. トランジスターの耐圧と回路の安定性

トランジスターの耐圧は、特に高電圧アプリケーションや不安定な電源環境下で非常に重要です。耐圧が高いトランジスターを使用することで、過電圧からトランジスターを守り、破損のリスクを減少させます。

また、高耐圧のトランジスターは、高い入力電圧や電源電圧の変動に対しても安定した動作を提供するため、より広い動作範囲を確保できます。

5. まとめ

インバーテッドダーリントン回路でFMMT491とFMMT593を使用する理由は、耐圧の高さにあります。出力電圧が5V程度であっても、回路における瞬間的な過電圧やスパイクに備えるため、高耐圧のFMMT593を選定することが設計者の安全性と信頼性を重視した選択であると言えるでしょう。