高校物理の波動で混乱しやすい三角関数合成と振幅の考え方を整理する

物理学

高校物理の波動分野では、進行波や定常波を扱う際に三角関数の合成が頻繁に登場します。その結果として sin(x+〜) や cos(t+〜)、あるいは sin(x+t+〜) の形が現れたとき、「振幅はどこにあるのか?」と疑問に思う人は少なくありません。本記事では、式の形と振幅の意味を丁寧に整理し、混乱しがちなポイントを解消します。

波の基本形と振幅の定義

まず、波の基本形を確認します。進行波は一般に y=A sin(kx−ωt+φ) の形で表されます。このとき、A が振幅であり、これは位置 x や時刻 t に依らない一定値です。

振幅とは「その位置での最大変位」を意味します。したがって、振幅は sin や cos の前に掛かっている係数として定義され、三角関数の中身(角度)に含まれる変数とは本質的に異なります。

sin(x+〜) や cos(t+〜) の形が出てくる理由

三角関数の合成を行うと、sin(kx)cos(ωt) のような積の形が、sin(kx+ωt) や sin(kx−ωt) の形に変形されることがあります。このとき、見た目が一変するため混乱しがちです。

sin(x+〜) や cos(t+〜) の形になっても、それ自体は「位相」を表しているだけで、振幅が x や t を含むことを意味するわけではありません。振幅は依然として式の外側の係数です。

定常波で振幅が x を含むように見える場合

定常波の式は y=2A sin(kx)cos(ωt) のように表されます。この場合、cos(ωt) が時間変化を、sin(kx) が位置による振幅分布を表します。

このとき「振幅」は 2A sin(kx) となり、位置 x によって振幅が変化します。これは定常波特有の性質であり、節と腹が生じる理由でもあります。したがって、「振幅が x を含む」という状況は、定常波に限って正しい理解です。

sin(x+t+〜) の形では振幅はどう考えるか

sin(x+t+〜) のように x と t が同時に中に含まれている場合は、進行波の典型的な形です。この場合、波形は空間的に移動しており、特定の位置に注目すると時間とともに振動します。

この式でも振幅は一定であり、sin の前に掛かっている係数が振幅です。x+t が入っているからといって、振幅が x や t に依存しているわけではありません。

なぜ「振幅は外、位相は中」と考えるのか

三角関数は -1 から 1 の範囲で値を取るため、その最大値をどれだけ伸ばしているかが振幅です。一方、x や t は「いつ・どこでその値になるか」を決める位相の役割を持っています。

この役割分担を意識すると、式の見た目が変わっても振幅の判断に迷わなくなります。「最大値を決めているのはどこか?」という視点が重要です。

まとめ:振幅を見るコツは式の外側に注目すること

波動の式で振幅を判断する際は、三角関数の外にある係数に注目することが基本です。sin や cos の中身に x や t が含まれていても、それは位相を表しているだけです。

ただし、定常波のように係数そのものが x を含む場合は、位置によって振幅が変化します。この違いを整理して理解することで、波の立式に対する苦手意識は大きく減るでしょう。

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