NAND型フラッシュメモリでは、フローティングゲートに蓄えられた電荷量によってチャネルが形成されやすいかどうかが変化します。しかし、多くの初学者がつまずくポイントとして、「電子が入る=ゲート電圧が高く必要?」という直感と、実際の動作が逆になるという点があります。この記事では、その理由を物理モデルを使ってわかりやすく解説します。
NAND型フラッシュメモリの基本構造を押さえる
NAND型フラッシュメモリは、MOSFETのゲート酸化膜の上にもう一つの導体であるフローティングゲート(FG)を持つ構造です。FGは絶縁されているため、電子が入ると外に出られず、長期間電荷を保持できます。この電荷量の変化によって、MOSFETがオンになるしきい値電圧(Vth)が変化し、データの0と1を判定します。
このVthの変化を正しく理解することが、今回の疑問解決のカギとなります。
直感と逆になる理由:フローティングゲートの電子は“ゲート電圧を下げる方向に作用する”
質問者が誤解しがちなポイントは、「電子がたまる=負電荷=チャネル形成が難しくなる=高電圧が必要」と考えてしまう点です。実際には逆で、フローティングゲートの電子はゲートから見た有効電圧を押し上げる方向に働きます。
なぜかというと、MOSFETはゲート電荷の総量によって動作が決まるからです。ゲートに外から加える電圧+フローティングゲートに蓄えた電荷が合成されて、有効なゲート電圧としてチャネル形成に作用します。
具体例:電荷がある場合とない場合の比較
この概念をより深く理解するために、二つのケースを比べてみましょう。
① フローティングゲートに電子がある(負電荷)
負電荷は、ゲート電圧に対して“補助的に働く”ため、チャネルを形成するために必要な外部ゲート電圧は低くなります。つまり、低い電圧でもMOSFETがオンになります。この状態が論理的には1と判定されることが多いです。
② フローティングゲートに電子がない
外部ゲート電圧のみでチャネルを形成しなければならないため、より大きな電圧が必要になります。これは論理的には0として扱われることが一般的です。
あなたの認識が間違っていたポイント
質問者が誤って理解していた部分は、次の点です。
- 「電子がある=MOSFETのオンが妨げられる」→これは誤り
- 実際には「電子がある=MOSFETはオンになりやすい(低Vth)」
- 「電子がない=オンにするためのゲート電圧が多く必要(高Vth)」
つまり、MOSFETの動作はチャネル付近の電界によって決まっており、フローティングゲートの電子は外部ゲート電圧と同じ方向に働くと考えるのが正しい理解なのです。
理解を深めるためのシンプルモデル
フローティングゲートに電子がある状態は、電池に“追い電圧”をしたかのようなイメージをすると理解しやすくなります。負電荷そのものは電子ですが、その存在がチャネルに向けた電界形成を助ける方向に働くため、必要な外部電圧が下がります。
このモデルを押さえておくと、記憶動作(書き込み・消去・読み取り)の理解もスムーズになります。
まとめ
NAND型フラッシュメモリのしきい値電圧が「電子がある→低電圧でオン」「電子がない→高電圧でオン」という一見逆に思える現象は、MOSFETの電界による動作原理が理由です。フローティングゲートの電子は、外部ゲート電圧の“助け”となるため、電子があるほどオンになりやすくなります。この理解ができれば、NANDの記憶方式や読み取り動作の仕組みが格段にわかりやすくなるでしょう。

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