『土佐日記』の一文、「都出でて君に会はむと来しものを来しかひもなく別れぬるかな」についての品詞分解と、「来」の活用形が異なる理由について解説します。この文は、平安時代の文学における表現や文法の理解において重要です。
一文の品詞分解
まず、この文を品詞分解してみましょう。
- 「都出でて」:動詞「出づ」の連用形に「て」が付いた形。意味は「都を出て」で、場所を離れる動作を表します。
- 「君に会はむ」:動詞「会ふ」の未然形「会は」と、意志を表す助動詞「む」の組み合わせ。意味は「君に会いたい、会おうと思う」となります。
- 「と」:接続助詞。ここでは、動詞「会はむ」の目的語として「君」を示す役割を持ちます。
- 「来し」:動詞「来す」の連用形。「来す」の意味は「来る」。ここでは、過去形の表現として使われています。
- 「ものを」:名詞「もの」+助詞「を」。ここでは、原因や理由を表す。「来しものを」とは、過去に来た事象や状況を意味します。
- 「来しかひもなく」:動詞「来す」の連用形「来し」と、否定を表す「なく」が付いた形。「来しかひもなく」とは、予期していたことが実現しなかった、という意味です。
- 「別れぬるかな」:動詞「別る」の未然形「別れ」と、否定の助動詞「ぬ」の連体形「ぬる」、また、感嘆や疑問を表す「かな」。意味は「別れられないのだろうか」という疑問や感嘆を表しています。
「来」の活用形が異なる理由
この一文の中で登場する「来」という動詞の活用形が異なる理由について解説します。
最初に登場する「来し」は動詞「来す」の連用形で、過去に実現した事象を表現しています。「来す」は「来る」の古語であり、過去に実際に来たことを表すために「来し」と使われています。
一方、次に登場する「来しかひもなく」は、連用形「来し」に「なく」が付いて、予期していたことが実現しなかったことを示します。「来す」の動詞が否定形となることで、「来たかったけれども来ることができなかった」という意味が強調されます。
まとめ
『土佐日記』の一文「都出でて君に会はむと来しものを来しかひもなく別れぬるかな」は、古語の使い方や文法が豊富で、表現の奥深さを理解するために品詞分解が重要です。また、「来」の活用形が異なる理由は、過去の出来事と予期していたことが実現しなかったことを強調するためです。この文を学ぶことで、平安時代の日本語表現に対する理解が深まります。


コメント