海外文学や哲学書、日本語文学や古典を読むとき、翻訳家の“声”が気づかぬうちに気に入ってしまう──そんな経験は、多くの読者が抱く感覚ではないでしょうか。本記事では、翻訳家とは何かを考えつつ、「訳者読み」や「翻訳家フェイバリット」を見つけるための指針と、おすすめの翻訳家を紹介します。
翻訳家とは何か ― “作者の声を別の言語に移す”仕事
翻訳家は単なる言葉の変換者ではなく、原文のニュアンス・文体・リズム、文化バックグラウンドを読み取り、別言語の読者の感受性に合わせて“再構築”する芸術家でもあります。
そのため、翻訳家によって同じ原作でも印象が大きく変わることがあります。だからこそ、自然と「この訳者の作品ばかり読んでいる」という“偏り”が出るのは自然なことです。
“訳者フェイバリット”がついつい増える理由
以下のような理由で、ある翻訳家の訳に惹かれて、知らず知らずのうちに同訳者の作品ばかり手に取る、ということが起こりやすいのです。
- 翻訳家の文体が読みやすい/好みに合う
- 語感やリズム、訳のトーンが“しっくり”くる
- 同じ訳者が訳した作品を通じて、一貫した世界観や訳の“質”を信頼できる
特に、文学・哲学・思想書など、原書の雰囲気や細かなニュアンスが大事なジャンルでは、この傾向は顕著になります。
おすすめ翻訳家の紹介 ― 多様なジャンルから
以下は私なりの「訳者フェイバリット/おすすめ翻訳家リスト」です。読書の幅が広がるきっかけになれば幸いです。
- ― 『若草物語』(原: L. M. モンゴメリ)など、児童文学・古典洋書の日本語訳で長年親しまれた訳者です。彼女の訳は読みやすく、初めて翻訳文学に触れる人にもおすすめ。[参照]
- ― 明治〜大正時代に西洋文学を訳した翻訳家で、古典的な文体で洋書を味わいたい人に向きます。翻訳文学や当時の海外文学の雰囲気を味わえる稀有な存在。[参照]
- — 日本文学を英語圏に紹介した名翻訳家。作品を別言語で楽しみたい人や、国際的な読者にも受け入れられる“訳の質”を知りたい人におすすめ。[参照]
- — 日本や東アジアの古典思想・武道思想、歴史に関する書籍を英語で訳す翻訳家。哲学・思想・武道関係の本を原書で読みたい人や海外発想を吸収したい人に向いています。[参照]
訳者を意識した読書 ― “訳者フェイバリット”を作るコツ
訳者を気にしながら読むことで、単なる作品の内容以上に“翻訳の質”“訳者の感性”にも着目できます。以下のような方法で“訳者フェイバリット”を育ててみるのもおすすめです。
- 気に入った訳を見つけたら、その訳者の他の訳書を探して読む
- 古典・思想書・哲学書・海外文学など、訳の良し悪しが読みやすさに直結するジャンルから試す
- 異なる訳者の同じ作品を読み比べて、どのように印象が変わるかを体験してみる
こうした読書を通じて、「訳者の声」を自分なりに楽しむことができます。
まとめ ― “訳者フェイバリット”を楽しむ読書スタイル
翻訳家は、原作と読者をつなぐ「声の架け橋」。その声が自分にとって心地よければ、知らず知らずのうちにその翻訳家の作品ばかり手元に集まる――というのは、ごく自然なことです。
だからこそ、“訳者フェイバリット”を意識して読書をすると、作品との新しい出会いや、自分の読書スタイルの発見につながります。ぜひ、自分だけのお気に入り翻訳家を見つけてみてください。


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