中国において、祝い事や節日などで「植物や果実をお風呂に入れて入浴する」という習慣があったかどうか――本記事では、歴史的文献や東アジアの伝統行事をもとに、この疑問に迫ります。
東アジアの伝統入浴「薬湯」の起源
実は「薬湯 (お湯に薬草や植物を入れて入浴する)」という習慣は、東アジアで古くから行われてきた入浴文化の一つであり、その起源は中国大陸にもさかのぼると考えられています。:contentReference[oaicite:0]{index=0}
具体的には、葉・根・皮などを煮出したものを湯に入れたり、植物そのものを湯に浮かべたりすることで、その薬効成分を体に取り入れるという考え方です。:contentReference[oaicite:1]{index=1}
古代中国の上巳節(三月三日)と入浴の習俗
古代中国の「上巳節(さんしせつ/三月三日)」は、川辺で水に浸かって邪気を洗い流す習俗があったことで知られ、春のはじめの穢れを落とす意味があったとされています。:contentReference[oaicite:3]{index=3}
この際、川での水浴び(沐浴)が主流でしたが、「香草や薬草を用いて身体を清める」という観念は、中国における“穢れ祓い”や“疫病除け”の伝統と強く結びついていたようです。:contentReference[oaicite:4]{index=4}
なぜ「植物風呂」が日本で普及したのか ― 菖蒲湯 のケース
日本で知られる菖蒲湯は、もともと中国の「蘭湯(らんとう)」という、薬草(蘭草など)を湯に入れて沸かす入浴法に由来すると言われています。:contentReference[oaicite:6]{index=6}
しかし、日本では蘭草が手に入りにくかったため、水生植物である「菖蒲(しょうぶ)」が代用され、江戸時代以降、節句の風習のひとつとして定着しました。これが現在の端午の節句における菖蒲湯となったのです。:contentReference[oaicite:7]{index=7}
中国で「植物・果実風呂」が現代まで残っているか?
ただし、現在の中国で「お祝い事に植物や果実を湯に入れてお風呂に入る」という習慣が、一般的あるいは広く認識された形で続いている、という明確な資料・報告は見当たりません。
現存する文献や研究でも、古代の「薬湯」の伝統は確認されるものの、それが近現代の習慣として継承されているかは不明です。特に都市化や衛生観念の変化に伴い、薬草入りの家庭風呂といった習慣は一般化していないようです。
まとめ:古代の「薬湯」はあったが、現在の風呂文化とは分かれている
結論として、中国には古代から「薬草入りの湯に入る」「川や湯で身体を清める」といった習慣があった記録があります。しかし、それは祭祀や穢れ祓い、疫病除けを目的としたものであり、現代における「お祝い事に果実や植物を風呂に入れる習慣」として一般化しているわけではないようです。
その後、この文化が日本に伝わり、植物風呂(例えば菖蒲湯やゆず湯など)の習慣となって発展した――という理解が、歴史的な流れとしては妥当です。


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