(CBT)は多くの人に効果があることで知られていますが、「自分にはしっくりこない」「違和感がある」という声もよく聞かれます。本記事では、なぜCBTに「合う・合わない」があるのか、その背景を整理し、「合わないからダメ」という単純な評価ではないことを説明します。
認知行動療法とは何か ― その目的と一般的メリット
認知行動療法は、私たちの 「認知(考え方)」「行動(ふるまい)」 に働きかける心理療法です。出来事に対する思考の偏り(認知の歪み)を見つけて修正し、行動パターンも変えていくことで、気分の改善やストレス対処のスキルを身につけられることが、多くの研究で示されています。[参照]
実際、うつ病、不安障害、PTSD、摂食障害など幅広い心理的な問題に対して有効であるというエビデンスが数多くあります。[参照]
なぜ「合わない/違和感を感じる人」がいるのか ― 個人差の原因
ただし、CBTの効果には個人差があります。「合わない」と感じたり、「違和感」を覚えたりする人が一定数いるのも事実です。その主な理由は以下のように整理されます。
- 今の症状が重く、認知そのものを冷静に見直すのが難しい場合。強い落ち込みや不安の中では、思考を客観視する余地が乏しく、認知を変えるどころか負担になることがあります。[参照]
- 心理療法に対する前向きさや主体性が不足している場合。CBTでは、単にセッションを受けるだけでなく、“自分で考え直す”“行動を変える”という本人の努力が不可欠です。受け身だったり、変化を望んでいなかったりすると効果は出にくいとされます。[参照]
- 「自分の認知」や「思考の癖」に向き合うことが苦しい/抵抗がある場合。過去のトラウマ、不安、葛藤などに触れることで、心理的な負荷を感じる人もおり、その過程を避けたくなることがあります。[参照]
- そもそも相性や環境、治療形式(頻度や方法)が合っていない場合。 therapistとの信頼関係、セッションの進め方、生活状況なども重要な要素です。心理療法の結果には、こうした“共通因子(therapeutic alliance など)”の影響が大きい、という研究もあります。[参照]
「合わない=間違っている」ではない ― 多様な治療法の選択肢
つまり、CBTに違和感を感じるからといって、それが「あなたの感じ方が間違っている」というわけではありません。人にはそれぞれ、性格や過去、今の状況、心の状態があります。それゆえ、CBTがフィットしない人がいて当然です。
実際、症状や状態によっては、薬物治療や別の心理療法、休息や環境の改善、ストレスケアなど、他の方法がより適切とされることもあります。[参照]
もし違和感を感じたら ― 試してみたい別の選択肢や心構え
違和感を感じた場合、まずは焦らず、自分に合ったペースや方法を見直すことが大切です。例えば、セッションの頻度を変える・別のカウンセラーに相談する・薬物療法と併用する・心理療法の種類を変えてみる、などです。
また、心理的な安定を優先するために、まずは休養や環境改善、ストレス源の軽減など“土台”を整えるのも重要です。そして、「治療はやらされるもの」ではなく、「自分のペースで・自分の人生のためのもの」という意識で向き合うのが望ましいでしょう。
まとめ ― 違和感は“向き不向き”のサイン、無理せず自分に合う方法を探そう
認知行動療法は強い効果がある心理療法として広く支持されていますが、すべての人に万能というわけではありません。症状の重さ・心の状態・治療への意欲・相性など、多くの要因で「合う/合わない」が分かれます。
大切なのは、「違和感を感じたから自分が間違っている」と悲観するのではなく、「自分に合った方法」「自分の心に負担の少ない方法」を見つけることです。複数の選択肢を知り、自分の感覚を大切にしながら、よりよい心のケアを探してみてください。


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