高校や大学の物理で、ばねのような単純調和振動の式を扱うとき、「√(kL²/m)」という形の式を見かけ、「これを L√(k/m) と書き換えても減点されるか?」と気になることがあります。本記事では、なぜこの書き換えが数学的に正当であるか、また物理的な意味も含めて確認します。
√(kL²/m) と L√(k/m) — 書き換えが妥当な理由
まず数学的に考えると、
√(kL²/m) = √((k/m)·L²) = √(k/m) · √(L²) = √(k/m) · L
となり、これはただの代数の恒等変形です。よって、「√(kL²/m)」を「L√(k/m)」と書くのは数学的にまったく問題ありません。
実際、物理の演習や定義でも、角振動数 ω は一般に ω = √(k/m) と定義され、変位量や振幅を掛けることで変形された式が使われることが多いです。[参照]
ただし注意すべき「物理量の意味」と「変数の使い分け」
ただし物理では、式に使う記号が何を意味するかが重要です。たとえば L が「変位」「自然長からの伸び縮みの長さ」「初期変位」などどの量を指すかによって、式の意味が変わります。
もし L が振幅や変位量を意味するなら、L√(k/m) は「振動の角周波数 × 振幅」のような形になります。一方、L が自然長からの変位そのものを表していて、さらにその変位が時間変動する変数 x(t) なら、√(kL²/m) のような形は定常値としては意味を持たず、「瞬時の速度」「エネルギー」など他の物理量の式になっている可能性があります。
具体例 — 単振り子・ばね系での使われ方
例えば、ばね定数 k、質量 m の物体をばねにつなぎ、自然長から L の変位で伸ばした場合、振動の角振動数 ω は ω = √(k/m) です。振幅を A とすれば、初期条件によって x(t) = A cos(ωt) のように書けます。振幅 A を L と表現したなら、速度の最大値やエネルギーの式などで L√(k/m) のような形が現れることがあります。[参照]
このように、数学的な書き換えが許されるだけでなく、「何の量を表しているか」に応じて適切な記号を使えば、L√(k/m) の形は物理的にも意味を持ちます。
一方で書き換えが許されない・減点されやすい場面
ただし、試験問題・レポート・答案で以下のような注意点があります。
- 式変形の過程を省略して「突然 L√(k/m) と書いた」だけだと、なぜそう書けるか説明が不十分とみなされる場合がある。
- 元の式で L² が「変数 x²」のような意味で使われていた場合、それを単に L とみなすのは誤りとなる。
- 物理的な文脈(振幅、変位、エネルギーなど)を明示せずに記号を変えると、読者に誤解を与える可能性がある。
まとめ ― 書き換え自体は正しいが、意味と文脈を意識すべき
結論として、「√(kL²/m) を L√(k/m) と書き換える」は数学的には正当であり、多くの場合問題ありません。しかし、物理の答案や文章では、その記号が何を表すか、どのような条件・意味で使われているかを明示することが重要です。
したがって、単なる数学的な代数変形としては問題ありませんが、物理量として意味を保つためには「変数/定数の役割」「文脈/意味」をきちんと示したうえで使うようにしましょう。


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