溶接時に発生する変形の一因として、縦収縮と横収縮があります。これらの収縮は、溶接金属が冷却される過程で生じる固有ひずみによって引き起こされます。この記事では、溶接変形の縦収縮と横収縮を固有ひずみを使って説明し、実際の溶接作業における影響について詳しく解説します。
溶接変形の基本的な概念
溶接中に金属が溶けて冷却される際、金属の膨張・収縮が発生します。この過程で金属は内部にひずみを生じ、これが変形の原因となります。固有ひずみは、外部からの力が加わらなくても、材料内部で自発的に生じるひずみのことを指します。特に、溶接部では熱の影響によって、温度差がひずみを引き起こし、縦収縮や横収縮が発生します。
収縮の方向や大きさは、溶接の条件や使用する材料により異なりますが、基本的には溶接部が冷却されるときに金属が収縮し、変形が生じます。この収縮は縦方向、横方向、またはその両方に作用します。
縦収縮と横収縮の違い
溶接における縦収縮と横収縮は、それぞれ異なる方向で発生する収縮です。縦収縮は、主に溶接ビードの長さ方向に起こる収縮を指し、横収縮は、溶接ビードの幅方向に発生する収縮を意味します。
縦収縮は、溶接金属が冷却される際に長さ方向に収縮することによって、溶接部の長さが短縮されます。これにより、部材が引っ張られるような力が働き、変形を引き起こします。一方、横収縮は、溶接ビードの幅方向に収縮が生じ、金属の幅が狭くなります。これらの収縮は、溶接後に部材の寸法や形状に影響を与えるため、予測と管理が重要です。
固有ひずみの影響と溶接変形
固有ひずみは、溶接中に発生する収縮の主要な原因です。熱が加わった部分は膨張し、冷却されると収縮します。この膨張と収縮の過程で、金属内部に固有ひずみが蓄積され、最終的に溶接部に変形を引き起こします。
固有ひずみは、特に溶接ビードの端部で顕著に現れます。これにより、縦収縮や横収縮が発生し、溶接部が本来の形状から変形します。このような変形を最小限に抑えるためには、溶接時の温度制御や溶接順序を工夫することが重要です。
実際の溶接での影響と対策
実際の溶接作業では、縦収縮や横収縮が製品の寸法に影響を与えることがあります。例えば、縦収縮が過度に生じると、溶接部が引っ張られるような変形が発生し、製品の寸法がずれる原因になります。また、横収縮が強くなると、部材が曲がったり、歪んだりすることがあります。
これらの変形を防ぐためには、溶接の前に材料の配置や溶接条件を慎重に設定することが必要です。温度管理や適切な溶接順序、さらには収縮を考慮した部材の配置を行うことで、溶接後の変形を最小限に抑えることができます。
まとめ
溶接変形における縦収縮と横収縮は、固有ひずみによって引き起こされます。溶接中の熱膨張と冷却時の収縮が、金属内部にひずみを生じ、変形を引き起こします。縦収縮と横収縮はそれぞれ異なる方向で発生し、これが溶接部の形状に影響を与えます。適切な溶接条件や温度管理を行い、収縮を最小限に抑えることで、溶接部の精度を高めることができます。


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