英語の表現「I will have someone carry your luggage for you.」を見て、「誰かに荷物を運んでもらう」という意味になる仕組みに疑問を持った人も多いでしょう。本記事では、この文がなぜ成立するのか、“使役 (causative)” の構造を中心に解説します。
使役 (Causative) とは何か
英語には、「自分でやる」のではなく「誰かにやってもらう/やらせる」という意味を表す文法があり、それを一般に “使役 (causative)” と呼びます。例えば「髪を切ってもらう」「車を洗ってもらう」のような場面で使われます。[参照]
この使役表現は、単に受動態 (passive) とは異なり、「誰が/誰にやってもらうか」を明示できる点が特徴です。たとえば “I had my car washed.” なら「(誰かに)車を洗ってもらった」の意味になります。 [参照]
“have someone do something” の構造と意味
今回の例文は “have someone carry your luggage” の形で、まさにこの “have + 人 + 動詞の原形” という使役の文型です。構造的には以下のように分解できます。
- 主語 (Subject): I
- have: “〜してもらう/依頼する” を示す使役動詞
- someone: 荷物を運ぶ人 (agent)
- carry: 動詞の原形 (infinitive の “to” は不要)
- your luggage: 目的語 (運ばれるもの)
この文型では「私があなたの荷物を運ぶ」のではなく、「私が誰かに『あなたの荷物を運ぶ』という行動を手配する/依頼する」という意味になります。つまり “あなたの荷物を運んでもらうよう、誰かを手配する” というニュアンスになるのです。 [参照]
“have something done” との違い
似た構造に “have + 目的語 + 過去分詞” という形があります (たとえば “I had my car washed.”) 。これは「何かをしてもらう (サービスを受ける)」という意味になります。 [参照]
一方 “have someone do something” は「誰にやってもらうか」を明示する形で、「誰かを動かして/誰かに頼んで」やってもらうという意味になります。そのため、“誰がやるか”が重要な場面で使われます。 [参照]
なぜ “carry” の原形なのか ― 不定詞 (infinitive) の使い方
使役動詞 “have” を使った構文では、後に続く動詞は原形 (base form) を用います。これは “make” や “let” など他の使役動詞も同様です。 [参照]
つまり、“carry your luggage” のように “to” をつけず動詞の原形を並べることで、「(誰かに)荷物を運んでもらうよう依頼する」という意味をスマートに伝えることができます。
実際の例文とそのニュアンスの違い
以下のような例文でニュアンスの違いがわかりやすくなります。
- I will have someone carry your luggage for you. — 誰かに荷物を運んでもらうよう手配します/依頼します。
- I will get someone to carry your luggage for you. — (ややカジュアル) 誰かに頼んで荷物を運んでもらいます。
- I will have your luggage carried for you. — (受動的) あなたの荷物を運んでもらうようにします (誰が運ぶかは明示されない)。
このように、使役の文を使うことで、「誰に頼むか」「その依頼をしたのは誰か」「荷物を運ぶのは誰か」といった情報の有無やニュアンスを細かくコントロールできます。
まとめ
「I will have someone carry your luggage for you.」は、使役 (causative) の文法構造 “have + 人 + 動詞の原形” を使った典型的な表現で、「誰かに荷物を運んでもらうよう手配/依頼する」という意味になります。
この構造と、その類似表現 (“have something done”、 “get someone to do something” など) を理解することで、英語で「~してもらう/~してもらいたい」をより自然かつ正確に表現できるようになります。


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