中学3年生の化学の問題で、塩酸中に銅板と亜鉛板を入れて反応を観察する実験に関する質問があります。具体的には、銅板と亜鉛板でどのような反応が起き、なぜ銅板に水素が発生し、亜鉛板が溶けるのかについて理解できないという疑問です。この記事では、イオンの反応や電気分解の基本を元に、この問題の解説を行います。
銅板と亜鉛板の反応の基本
まず、銅板と亜鉛板が塩酸中でどのように反応するのかを理解するためには、電気分解の原理を知っておくことが重要です。塩酸(HCl)は水溶液中で水素イオン(H⁺)と塩化物イオン(Cl⁻)に分かれます。銅板と亜鉛板はそれぞれ電極として機能し、電気分解が進行します。
亜鉛板は「陽極」として作用し、酸化反応を受けて亜鉛(Zn)がイオン化して溶け出します。この反応を「亜鉛の酸化反応」といいます。亜鉛板では、次のような反応が起こります。
Zn → Zn²⁺ + 2e⁻
水素が発生する銅板の役割
一方、銅板は「陰極」として機能し、亜鉛板から放出された電子を受け取ります。銅板では水素イオン(H⁺)が電子を受け取って水素ガス(H₂)を発生します。この反応が水素の発生に関係しています。反応式は次のように表されます。
2H⁺ + 2e⁻ → H₂↑
この反応が銅板の表面で起こるため、銅板から水素ガスが発生します。
亜鉛板が溶ける理由と塩素の発生
質問にあった「亜鉛板が溶ける=塩素が発生した」という点についてですが、これは誤解です。亜鉛板が溶けるのは、亜鉛が陽極で酸化されてZn²⁺イオンとして溶け出すからです。塩素は陰極ではなく陽極で発生しません。実際、塩素ガス(Cl₂)は陽極での反応に関係していますが、亜鉛板では塩化物イオン(Cl⁻)が反応しないため、塩素ガスは発生しません。
塩素ガスが発生するのは、塩酸中の塩化物イオンが電気分解によって酸化される場合で、これは別の反応条件が必要です。したがって、亜鉛板が溶けることは塩素ガスの発生とは関係がないことがわかります。
なぜ銅板で水素が発生するのか?
銅板に水素が発生する理由は、銅板が陰極として機能し、水素イオン(H⁺)が電子を受け取って水素ガス(H₂)を放出するためです。この反応は水素イオンが電子を受け取って水素ガスが発生する還元反応です。亜鉛板が陽極で亜鉛が溶け出すのに対し、銅板では水素イオンが還元される反応が行われます。
また、亜鉛板が陰極であるという質問の内容に対して、亜鉛板が陰極であれば水素が発生するという点は間違いです。陰極では水素イオンが還元されるため、実際に水素が発生するのは銅板の方です。
まとめ
塩酸中の銅板と亜鉛板の反応では、銅板で水素が発生し、亜鉛板が溶けるという現象が起こります。亜鉛板が溶ける理由は、亜鉛が陽極で酸化反応を受けてZn²⁺イオンとなり、溶け出すためです。一方、銅板で水素が発生するのは、銅板が陰極として働き、水素イオン(H⁺)が還元されるからです。塩素ガスは発生せず、この反応においては塩素は関与しません。


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