本記事では、品種改良によって発芽率が向上したかどうかを有意水準に基づいて統計的に検定する方法を解説します。問題にあるように、発芽率が向上したことを検定するには、標本データを用いて統計的仮説検定を行います。
仮説検定の概要
仮説検定は、ある主張が統計的に正しいかどうかを確かめるための手法です。ここでは、発芽率が向上したかどうかを確かめるために次の仮説を設定します。
- 帰無仮説 (H0): 品種改良によって発芽率に変化はない(発芽率は60%のままである)
- 対立仮説 (H1): 品種改良によって発芽率が向上した(発芽率は60%より高い)
データの整理
問題のデータは、600個の種子のうち384個が発芽したという結果です。このデータを用いて、発芽率が60%を超えるかどうかを検定します。発芽率をpとし、384/600 = 0.64という結果を得ました。
発芽率が60%を超えているかを判断するため、以下の統計量を用います。
- サンプルサイズ: n = 600
- 観測された発芽率: p̂ = 0.64
- 帰無仮説の発芽率: p0 = 0.60
有意水準5%での検定
有意水準5%で検定を行います。まず、帰無仮説のもとでの標準誤差を計算します。
標準誤差 (SE) = sqrt[(p0 * (1 – p0)) / n] = sqrt[(0.60 * 0.40) / 600] ≈ 0.020
次に、z値を計算します。
z = (p̂ – p0) / SE = (0.64 – 0.60) / 0.020 = 2.0
z値が有意水準5%の片側検定での臨界値1.645より大きいため、帰無仮説を棄却し、発芽率が60%を超えていると判断できます。
有意水準1%での検定
有意水準1%で同様の手順を行います。臨界値は1%の片側検定で2.33です。z値が2.0であるため、1%の有意水準では帰無仮説を棄却することができません。この場合、発芽率が60%を超えているとは言えません。
まとめ
有意水準5%での検定では発芽率が60%を超えていると判断されましたが、有意水準1%では帰無仮説を棄却することができませんでした。したがって、品種改良による発芽率の向上が有意であるかどうかは、有意水準の設定に依存します。


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