ラック設置時に「8の字」でケーブルを掛ける理由と正しいケーブル管理法

物理学

サーバールームやネットワークラックで、ケーブルを“丸く一巻き”ではなく、あえて「8の字(フィギュアエイト)」状に縦棒2本に掛けている光景を見たことはありませんか?本記事では、その設置方法の意図・メリット・注意点を、ケーブル管理の観点からわかりやすくご紹介します。

「丸く巻かず、8の字に掛ける」基本的な発想

まず、ケーブルを一つの円(輪)に巻く代わりに、あえて縦棒2本を使って8の字状に掛ける方法には、いくつか物理的・運用的な理由があります。

代表的な仮説として、次のようなものがあります:

  • ケーブルが円形に巻かれた場合、ねじれや癖(ストレス)が生じやすい
  • 電気的な観点では、ループ状に巻くことで磁界・誘導ノイズが発生しやすいが、8の字にするとそれが相殺されるという説もあります。([参照](https://www.reddit.com/r/electricians/comments/959fki/figure_eight_coil_of_excess_wire/))

物理・電気的なメリット:ねじれ防止と誘導ノイズ軽減

まず“ねじれ防止”の観点から。ケーブルを円形にまとめると、巻き取り・巻き戻しの際に内部導体やシールドが捻じれやすくなります。一方で8の字に掛ければ、左ループ・右ループでねじれ方向が打ち消されやすく、ケーブル寿命を延ばせます。

次に“誘導ノイズ”の観点です。直流・交流問わず電流が流れるケーブルをループ状にまとめると、周囲に磁界が発生しやすくなります。8の字にループを重ねる方法では、ループを反転させることで磁界の向きを逆にし「打ち消しあう」ことでノイズ抑制につながるという報告もあります。([参照](https://www.reddit.com/r/electricians/comments/959fki/figure_eight_coil_of_excess_wire/))

ラック設置での運用上のメリット

運用現場、特にラック配線では以下のようなメリットがあります。

・ケーブルが一本の大きな輪になると、重量や張力で垂れ下がったり、モジュールやラック機器の背面スペースに影響を与えやすい。8の字に掛けておけば、縦棒2本で支持されるため垂れ下がりが少なくなります。
・ケーブルが束になる箇所で“余長”を取る場合、8の字に掛けておくことで途中から引き出しやすく、後から機器を追加・交換する際の取り回しも容易です。

具体例:現場でよく見られる配置パターン

例として、データセンターのラック背面で、PDUs(電源分岐装置)から出たACケーブルの余長を管理する場合を考えましょう。ケーブルを機器から出してラックの縦棒2本に沿って“左右交互ループ”を掛けておき、左右どちらかのループから必要分を引き出せるようにします。

また、スイッチからスイッチまで長めのケーブルを敷設したあと、機器交換や追加が起きたときに、ケーブルを“そのまま取り替える”のではなく、余長を8の字ループとして背面に配置しておくことで、交換作業時にそのループを引き出して長さを確保しつつ、他のケーブルに影響を与えにくくなります。

注意点・誤解しやすいポイント

ただし、8の字管理をすれば無条件で万全というわけではありません。次のような注意点があります。

・ループ径が小さすぎると、ケーブルの内部導体に過度な曲げストレスが掛かり、性能低下や破損に繋がる可能性があります。特に光ファイバーでは最小曲げ半径が厳格です。([参照](https://communicationsengineering.files.wordpress.com/2007/08/ss-aerial-cable-corning.pdf))

・ケーブルが高電流・高負荷の場合、ループが重なって密集することで放熱が阻害され、発熱リスクが上がることがあります。適切な空間確保が重要です。
・「なぜ垂れないのか?」という点ですが、床に垂れ下がらないためには、掛け方だけでなくラック背面支柱の配置・ケーブルタイ・ケーブルガイドなどと併用することが大切です。

まとめ

ラック背面やケーブルマネジメントの現場で「縦棒2本に対して8の字にケーブルを掛ける」設置方法は、単なる見た目の理由ではなく、ねじれ防止・磁界・ノイズ軽減・運用効率向上など複数のメリットがあります。
一方で、ループ径・放熱・曲げ半径など注意すべき点も併せて理解しておくことで、ケーブル寿命を延ばし、メンテナンスも容易になる安全で効率的な配線環境をつくれます。

ケーブル管理に悩んだら、まず「8の字掛けがなぜ採用されているか」を思い出してみてください。そして実際にラック背面を見直して、「左右に掛ける余長ループ」「縦棒支柱を使った掛け方」「ループの径を確保できているか」を確認してみると、配線がぐっと引き締まります。

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