高校物理の「力」の分野で、「作用–反作用(=ニュートンの第3法則)」という言葉は頻繁に出てきますが、実際に問題を解くときに「いつ使えて」「いつは使わないか(使わなくてよいか)」を迷うことも多いと思います。本記事では、作用–反作用を活用すべき場面と、あえて使わない(または使えない)場面を、わかりやすい実例とともに整理します。
まず知っておきたい作用–反作用の基本
作用–反作用とは、ある物体 A が物体 B に力を及ぼすとき、物体 B も同時に物体 A に大きさが等しく・方向が逆の力を及ぼす――という法則です。([参照](https://openstax.org/books/physics/pages/4-4-newtons-third-law-of-motion))
大切なポイントとして次があります:
・この対になる力は必ず「異なる物体」に働いており、同じ物体ではありません。
・この法則自体では「どちらの物体が加速するか」「どれくらい加速するか」は直接示しません。それにはニュートンの第2法則(F=ma)などを用います。
「使うべき」典型的な場面
作用–反作用を明確に使うことで、力の対・物体間のやりとりを整理できる場面があります。
例えば:
・人が壁を押したら、壁が人を押し返す。この二つの力は作用–反作用のペアです。([参照](https://phys.libretexts.org/Bookshelves/University_Physics/University_Physics_I_-_Mechanics_Sound_Oscillations_and_Waves/05%3A_Newton%27s_Laws_of_Motion/5.06%3A_Newtons_Third_Law_of_Motion))
・ボートが水を後方に押し出すと、水がボートを前方に押す。これも作用–反作用の典型です。
さらに、問題を解くときに有効な状況には次があります:
・物体 A と物体 B のやりとり(接触や推力など)があり、力を“相互作用”として扱いたいとき。
・システムを「物体 A だけ」または「物体 B だけ」に分けて、外力・内部力の区別を明確にする必要があるとき。([参照](https://courses.lumenlearning.com/suny-physics/chapter/4-4-newtons-third-law-of-motion-symmetry-in-forces/))
「使わない/意識しなくてよい」場面の見分け方
一方で、すべての力の計算で「作用–反作用の法則」を意識して数式に明記する必要があるわけではありません。使わなくてよい場面もあります。
判断のポイントとして:
・問題の対象(=系)を選定して、その系内部の力(物体同士の力)を“内力”として扱っているなら、作用–反作用をペアで計算には使わず、外力だけを見て運動方程式を立ててよい。
・例えば「地面と物体」「物体とロープ」「物体と天井」など接触力があるときでも、自分が注目している物体に作用する“相手からの力”を単独で扱うなら、反作用力側を計算に出さなくても構いません。
実例:
机の上に置いた本の「重力」と「机の上からの垂直抗力」は作用–反作用のペアではありません。なぜなら、それぞれが異なる物体間の力ではありますが、本から机への重力と机から本への垂直抗力は作用–反作用の関係ではないからです。([参照](https://openstax.org/books/physics/pages/4-4-newtons-third-law-of-motion))
具体的な演習例と使い方・使わなさ方の比較
例1:人が床を蹴って前に進む場合。人が床を後ろに押すという作用に対して、床が人を前に押すという反作用があります。この状況では、作用–反作用の理解が動く原理の把握に非常に役立ちます。
例2:斜面を滑る物体に作用する摩擦力・重力・法線力などを考えるとき、注目対象を“物体”としたら、机からの法線力だけを外力として扱い、その反作用先を明記せずにF=maで加速度を求めても構いません。作用–反作用の法則を“明記”する必要はない場面です。
使い方を迷ったときのチェックリスト
以下のチェックリストを使って、「この場面で作用–反作用を使うか?」を判断できます。
- 注目している“系”は何か?(例えば「物体A」だけ、「物体A+B」など)
もし「注目系の外に出ていない力」を数式にいれていたら、作用–反作用のペアの理解が役立ちます。逆に「注目物体に働く外力だけ」で十分なら、明確に作用–反作用を使わなくても問題は解けます。
まとめ
物理基礎で「作用–反作用(ニュートンの第3法則)」をいつ使うか・使わないかを迷ったときは、次のポイントを思い出してください:
・この法則は“物体Aと物体Bの相互作用”で成り立つペアの力の話。
・計算上は「注目する系」に対して外力だけを扱うなら、必ずしも明示的に作用–反作用をセットで書く必要はない。
・逆に、“相互力のやり取り”を整理したいときや、系の選び方で内力・外力の区別で迷ったときには、この法則が強力に役立ちます。
これらを理解・意識しておけば、物理の問題で“いつ第3法則を使うべきか”迷う回数がぐっと減るはずです。しっかりマスターしておきましょう。


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