モール法におけるクロム酸銀の沈殿とその理由についての解説

化学

モール法では、滴定によって溶液中の塩化物イオンの濃度を求めますが、当量点を過ぎた後に硝酸銀を加えるとクロム酸銀が沈殿する理由について、溶解度積と化学反応の観点から解説します。この現象における塩化銀とクロム酸銀の沈殿に関する理解は、モール法を用いた化学分析の深い理解を助けます。

モール法とは

モール法は、溶液中の塩化物イオンの濃度を求めるために用いられる滴定法の一つです。硝酸銀(AgNO3)を滴下することで、塩化物イオン(Cl-)と反応し、塩化銀(AgCl)の沈殿を得ます。この反応が進行することで、塩化物イオンの量を求めることができます。

当量点後の反応

モール法では、当量点に達した後、さらに硝酸銀を滴下すると、塩化銀がすでに完全に沈殿している場合でも、クロム酸銀(Ag2CrO4)が沈殿します。なぜこのような現象が起こるのでしょうか?

塩化銀とクロム酸銀の溶解度積の違い

溶解度積(Ksp)は、物質が溶ける程度を示す定数であり、物質が水に溶解する限界を表します。塩化銀(AgCl)の溶解度積は比較的小さいため、溶解しにくい物質です。しかし、クロム酸銀(Ag2CrO4)は塩化銀よりもさらに溶解度積が小さく、したがってクロム酸銀の沈殿は塩化銀よりも優先的に起こります。

このため、当量点を過ぎた後に硝酸銀を加えると、塩化物イオンがすでに反応しているにもかかわらず、クロム酸銀が沈殿し始めるのです。

クロム酸銀の沈殿が優先される理由

クロム酸銀(Ag2CrO4)は非常に低い溶解度積を持つため、Ag+(銀イオン)が過剰に存在する状態でクロム酸イオン(CrO4 2-)と反応すると、クロム酸銀が沈殿します。つまり、クロム酸銀の沈殿は塩化銀よりも優先的に起こるのです。

また、塩化物イオンとクロム酸イオンが同時に存在する条件でも、クロム酸銀の沈殿が優先されるため、塩化銀は最初に完全に沈殿し、その後クロム酸銀が沈殿する現象が見られます。

まとめ

モール法において当量点を過ぎた後に硝酸銀を加えるとクロム酸銀が沈殿する理由は、溶解度積の違いにあります。クロム酸銀(Ag2CrO4)は塩化銀(AgCl)よりもさらに小さい溶解度積を持ち、Ag+が過剰になるとクロム酸銀が優先的に沈殿します。これにより、塩化銀が完全に沈殿した後でもクロム酸銀の沈殿が見られるのです。

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