絵本や昔話を読み返してみると、「赤ずきん」「ヘンゼルとグレーテル」「鬼退治」など怖い場面が多く登場し、「子どもにどうしてこんな恐ろしい話を聞かせるの？」と感じることがあります。この記事では、童話や昔話に怖いエピソードが多い背景とその目的を、教育的・心理的・文化的観点から整理します。
昔話の怖い場面はどこから来るのか？
童話や昔話はもともと、口承（くしょう）で人々の暮らしや経験を語り継いできた物語です。伝承の中では「森で迷子になる」「魔女や鬼に襲われる」「家族から見放される」などの危険な場面が頻出しており、こうした〈恐怖〉や〈危機〉のモチーフが物語の核になってきました。([参照]https://communication-arts.uq.edu.au/article/2020/08/beauty-and-horror-fairy-tales)
特に人類の歴史の中で、子どもが迷子になる、野生動物に襲われる、飢えや死に直面するという現実のリスクがあった時代には、こうした恐怖を物語に用いることで「気をつけなさい」「危険を知りなさい」という役割を果たしていたという研究もあります。([参照]https://members.ieltsetc.com/wp-content/uploads/2022/06/Fairy-Tales.pdf)
教育的・道徳的な目的としての怖さ
昔話には「悪いことをするとどうなるか」「約束を守らないと危ない」という〈教訓〉の要素が込められています。怖い場面を通じて子どもたちは「選択」と「結果」の結びつきを感覚的に学び、自分の行動を振り返るきっかけを得ます。([参照]https://speakupstudio.com.au/why-are-fairy-tales-so-scary)
例えば「赤ずきん」の狼のエピソードでは、「知らない人についていくな」という注意が、恐怖を伴って印象的に伝わります。こうした恐怖体験を“安全な物語空間”で味わうことで、子どもは感情の整理や恐怖への耐性を育むという心理的な効果も期待されてきました。([参照]https://charlisays.com/the-dark-truths-behind-fairy-tales)
文化的・心理的背景としての〈怖さ〉の役割
怖い要素が抜けずに残る理由として、物語の中で〈恐れを理解し、乗り越える〉という心理的な経験が普遍的だからという見方があります。「森」「魔女」「鬼」などの象徴は、未知・危険・変化といった人生のテーマを象徴します。([参照]https://themorningheretic.wordpress.com/2018/01/22/why-are-fairy-tales-so-violent)
さらに、研究によれば童話や昔話における「生きるための知恵」「社会的なルール」「危機回避の教え」が恐怖を媒介として語り継がれてきた可能性が指摘されています。つまり、怖さを含むことで物語は記憶に残りやすく、世代を超えて伝わっていったのです。([参照]https://members.ieltsetc.com/wp-content/uploads/2022/06/Fairy-Tales.pdf)
現代における昔話の怖さの意味と活用
現代の子ども向けの昔話では、昔ほど直接的な残酷描写は少なくなっていますが、怖そうな要素を残すことで“内面的な成長”や“自分で判断する力”を育てる教材としても活用できます。「怖いから好きじゃない」という子どもにも、「なぜこの場面が怖いのか」を一緒に考えることで深い読みが可能になります。
また、家庭や教育現場で使う際には、怖い話をただ聞かせるだけでなく、「どう感じたか」「もし自分ならどうするか」を問いかけることで、物語と自分の生活をつなげる学びに変えることができます。
まとめ
童話や昔話に怖い話が多いのは、〈危険や恐怖〉を通じて〈教訓や生きる知恵〉を伝えるためという背景があります。怖い場面が物語を印象づけ、子どもたちが感情を整理しながら学ぶ機会を与えてくれているのです。
現代においても、昔話をただ読むだけでなく、「なぜ怖いのか」「どう感じたのか」を考えることで、物語の深い意味に触れることができます。怖さを恐れず、物語から学びを得るきっかけにしてみましょう。
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