「熊を絶滅させても問題ない。だから絶滅させるべきだ」という主張に対して、多くの人が「なぜ極端な発想になるのか」「なぜ中間的な視点が出てこないのか」と疑問に感じます。本記事では、極端な0/1思考(バイナリ思考)が生まれる背景を、環境倫理・生態システム・心理的メカニズムの観点から整理し、より複雑な視点を持つためのヒントを提示します。
0/1思考とは何か?なぜ人は単純化を選ぶのか
0/1思考(バイナリ思考)とは、ある問題を「是か非か」「白か黒か」という二元で捉える思考様式を指します。環境や動物保護の分野でも「絶滅=悪」「駆除=良」という極端な選択肢に陥りやすい傾向があります。
心理学的には、複雑で不確実性の高い問題を扱うときに、〈認知的負荷を減らす〉ために単純な枠組みを選びやすいという研究があります。また、感情的な反応を伴うテーマでは“明確な立場を示す”ほうが安心感を生みやすいという特徴もあります。
生態系・多要因の世界:極端な「絶滅してもいい」発言が見落とすもの
例えば、ある熊の個体群を絶滅させるという選択肢を考えたとき、実はその熊が担っている生態系内での役割(種子散布、捕食抑制、文化的価値など)を無視してしまうと、取り返しのつかない影響を引き起こす可能性があります。 [参照]
環境倫理の研究では、「絶滅させることが倫理的に許されるか」という問いに対し、「いつ、どの種、どの地域か」によって判断が変わるという複雑さがあることが確認されています。 [参照]
なぜ「絶滅させるべき」と主張する人が現れるのか:立場・価値観・言説戦略
いくつかの背景があります。まず、特定の動物が農業被害や人的被害を与えているという文脈では、「被害対策=根絶」というロジックに飛びやすくなります。また、動物を「害獣」「敵」として捉える言説が、倫理的・複雑的視点を省略して簡略化されることが多くあります。
さらに、メディアやSNSでは「挑発的」「過激な主張」が注目を集めやすいため、極端な言説が拡散されやすい構造があります。そのため、深い議論の前に「絶滅してもいい」という断定が立ち上がることがあります。
中間的・複雑的な議論を深めるためのポイント
・まず「その種が生態系でどんな役割を持っているか」を確認しましょう。
・次に「社会的・経済的・文化的価値」を含めた総合的な視点で考えることが重要です。
・最後に「他の選択肢(駆除・管理・共生)」「長期的な影響」を念頭に置くことで、0/1思考から脱却できます。
具体例として、熊による人身被害が頻発している地域では、ただ根絶を主張するのではなく「被害源の管理」「住民との共存策」「生息域の調整」など多角的な対策が議論されています。
まとめ
・「絶滅させても問題ない」という主張は、0/1思考という単純化された枠組みに立っています。
・しかし生態系・倫理・価値観を含めた複雑な現実には、「絶滅VS保存」だけでは捉えきれない側面があります。
・私たちは「なぜこの意見が出るのか」「背後にどんな価値・状況があるのか」を問い、複雑な視点を持つことで、より建設的な議論に参加できます。


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