塩化銀(AgCl)の溶解度を求める際、特にNaCl溶液に溶かす場合に発生する現象や計算について、誤解を招くことがあるかもしれません。質問にあるように、(S’+0.01)のS’を無視する理由について詳しく解説します。このような仮定が使われる背景には、溶解度の大きさとその影響が関係しています。
溶解度積(Ksp)の考え方
塩化銀(AgCl)の溶解度は、溶解度積(Ksp)を使用して計算することができます。Ksp = [Ag+][Cl-]であり、溶解度Sを使ってこれを計算します。NaClの影響を受けるとき、AgClの溶解度S’はNaClによって引き起こされるイオン強度の影響を考慮する必要があります。
質問にあるように、NaClが溶けると、Na+とCl-が共存し、Ag+やCl-の濃度に影響を与えます。このため、NaClがNa+とCl-の濃度を増やすと、AgClの溶解度S’が変化しますが、この変化を簡略化するために、(S’ + 0.01)という式でS’を無視する理由があります。
S’を無視する理由
なぜ(S’+0.01)のS’を無視するのかというと、NaClの濃度が0.01 mol/Lと大きいため、AgClの溶解度S’はNaClの影響に比べて非常に小さく、無視できるほど小さいからです。このような状況では、S’に比べてNaClの影響が圧倒的に大きいため、(S’+0.01)はS’に大きな影響を与えません。したがって、S’を無視して計算しても誤差は非常に小さく、結果として実用的な誤差に収束します。
具体的には、0.01 mol/LのNaClが溶解することで、Cl-の濃度は0.01 mol/Lに達しますが、この値がAgClの溶解度S’よりも何桁も大きいため、S’の影響はほとんど無視できます。
計算例とS’無視の効果
例えば、AgClのKspが1.0×10^-10であり、NaClの濃度が0.01 mol/Lの場合、次のように計算できます。
Ksp = S’ × (S’ + 0.01) = 1.0×10^-10
ここで、S’を無視した場合、(S’ + 0.01)は0.01 mol/Lとなり、S’ × 0.01 = 1.0×10^-10からS’を求めることができます。S’はおおよそ1.0×10^-8 mol/L程度となり、NaClの影響を受けていない場合と比べて非常に小さな値です。
まとめ
AgClの飽和溶解度を計算する際にS’を無視する理由は、NaClの濃度がAgClの溶解度に比べて非常に大きいため、その影響を簡略化できるからです。このような簡略化により、計算がより簡単になり、現実的な誤差が発生しにくくなります。


コメント