井出治氏のインバータ駆動方式に関する特許(JP2021072760A)は、トランスの二次側の出力電圧を入力電源電圧を一定に保ったまま増幅できると述べられています。この記事では、その原理と現実的な解釈、そしてフリーエネルギーの可能性について解説します。
特許で述べられている原理
特許では、反発磁場にスパイク電流による急激な磁束変化を生じさせることで正の起電力を誘起し、スパイク電流の周波数を高めることで過渡現象による残留波と重畳させて電圧を増幅すると説明されています。
ここでいう正の起電力は、従来の法則でいう電流を抑制する方向ではなく、電流を助長する方向に働くとされています。しかし、この現象は従来の電磁誘導の理論には存在しない未知の現象として記載されています。
物理的な現実性
既存の電磁理論(ファラデーの法則やレンツの法則)では、誘導起電力は常に電流を打ち消す方向に生じます。そのため、特許で述べられる「電流を助長する方向の起電力」が実際に実用化できるかは、独立した実験的検証が必要です。
現代の物理学では、フリーエネルギー装置は既知の法則に反するため、特許記載内容を鵜呑みにして即座にフリーエネルギー社会の実現を期待することは科学的には慎重である必要があります。
可能性と課題
もしこの方式が実際に動作し、電圧増幅が電源入力を超えない範囲で効率的に実現できる場合、省エネルギー型の電力変換や高効率トランスとしての応用は考えられます。しかし、エネルギー保存の法則を超えるフリーエネルギーの実現は、現時点では科学的に検証されていません。
まとめ
井出治氏の特許はユニークなアプローチを示していますが、科学的にはまだ理論と実験で検証が必要です。フリーエネルギーの社会実現については、理論上の可能性だけでなく、現実的な物理法則との整合性を確認することが重要です。
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