化学の有機反応において、NaOH (OH⁻) を求核剤に用いたハロゲン化メチルのSₙ2反応は、非常に興味深い現象を示します。特に、CH₃FとCH₃Iの反応性に顕著な違いがあります。今回は、この違いについて、脱離能や動的I効果の観点から詳しく解説します。
1. CH₃FとCH₃Iの反応性の違い
NaOH (OH⁻) を用いたSₙ2反応において、CH₃FとCH₃Iの反応性には大きな違いがあります。CH₃Iの方が圧倒的に反応しやすい理由は、I⁻の脱離能がF⁻よりも優れているためです。I⁻は脱離基として非常に優れており、反応が進行しやすいことがわかります。
一方で、CH₃FはF⁻が脱離基として非常に弱いため、反応が進行しにくいです。このように、F⁻とI⁻の間には脱離能に大きな差があります。
2. 脱離能と反応性の関係
「脱離能」とは、原子やイオンが結合から離れる能力を指します。脱離能が高い基は、Sₙ2反応において有利です。I⁻はF⁻に比べて脱離能が高いため、CH₃Iの反応が進行しやすくなります。
これは、脱離基の性質がSₙ2反応の速度に大きな影響を与えることを意味しています。F⁻は非常に強い塩基であり、電子を引き寄せる力が強いため、脱離しにくいのです。
3. 動的I効果と反応性の関係
井本稔先生の『有機電子論解説』に記載されている「動的I効果」についても触れておきます。この効果は、I⁻がF⁻よりも大きな原子半径を持っており、NaOHが電離して形成する電場の影響を受けやすいために起こります。
このような動的I効果により、C–I結合のCはよりδ+性が強くなり、OH⁻がC–IのCを攻撃しやすくなるため、反応が進行しやすくなります。この現象は、F⁻との比較においてI⁻が優れている理由の一つとして重要です。
4. まとめ:脱離能と動的I効果の影響
CH₃Iの反応性が高い理由は、脱離基としてのI⁻の優れた能力に加え、動的I効果によってC–I結合のCがよりδ+性を持ち、OH⁻が攻撃しやすくなるためです。対照的に、CH₃FではF⁻が脱離基として不利であり、反応が進行しにくいという結果になります。
これらの要素を理解することで、Sₙ2反応における基質の反応性や反応の進行のメカニズムをより深く理解することができます。


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