線形代数において逆行列は非常に重要な概念です。特に、3×3行列の逆行列を求める方法はよく学ばれますが、その計算方法を理解するのは少し難しいかもしれません。この記事では、3×3行列の逆行列の計算方法をステップバイステップで解説します。
逆行列の定義と必要条件
逆行列とは、行列Aに対して、行列Aの逆行列A-1が存在する場合に、AとA-1を掛け合わせると単位行列Iになることを意味します。つまり、A * A-1 = I です。逆行列が存在するためには、行列の行列式がゼロでないことが必要です。行列式がゼロの場合、その行列は「特異行列」と呼ばれ、逆行列を持ちません。
3×3行列の逆行列を求める方法
3×3行列Aの逆行列を求めるためには、次のステップを踏みます。
1. 行列Aの行列式det(A)を求めます。行列式det(A)がゼロでない場合、逆行列は存在します。
2. 行列Aの「余因子行列」を求めます。余因子行列は、行列Aの各要素について、その要素を含まない小さな行列の行列式を求め、符号を付け加えたものです。
3. 行列Aの逆行列は、余因子行列を転置してその逆数を掛けることで求めることができます。つまり、A-1 = (1/det(A)) * (余因子行列)T です。
具体例: 3×3行列の逆行列を求める
次に、具体的な3×3行列を使って逆行列を求める例を見ていきましょう。
例: 行列A = [ [4, 7, 2], [3, 5, 6], [1, 8, 9] ] の逆行列を求めます。
1. 行列式det(A)を求めます。
det(A) = 4(5*9 – 6*8) – 7(3*9 – 6*1) + 2(3*8 – 5*1) = 4(45 – 48) – 7(27 – 6) + 2(24 – 5) = 4(-3) – 7(21) + 2(19) = -12 – 147 + 38 = -121
2. 次に、余因子行列を求めます。
例えば、Aの(1,1)成分に対応する余因子は、行列Aの(1,1)を取り除いた小行列の行列式です。
余因子行列の計算を行った結果、以下の余因子行列が得られます。
余因子行列 = [ [-57, 42, -33], [ 32, -22, 7], [ 19, -14, 4] ]
逆行列を求めるための最終ステップ
3. 余因子行列を転置して、その逆数を掛けます。転置行列は、行列の行と列を入れ替える操作です。
余因子行列の転置は次のようになります。
余因子行列T = [ [-57, 32, 19], [ 42, -22, -14], [-33, 7, 4] ]
最後に、逆行列A-1は、det(A) = -121 であるため、次のように計算されます。
A-1 = (1 / -121) * 余因子行列T
A-1 = [ [0.471, -0.265, -0.157], [-0.347, 0.182, 0.116], [0.273, -0.058, -0.033] ]
まとめ
3×3行列の逆行列を求めるためには、まず行列式を求め、その後余因子行列を計算します。最後に、余因子行列を転置して、その逆数を掛けることで逆行列を求めることができます。これらのステップを理解することで、どんな3×3行列でも逆行列を計算することができるようになります。
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