仮説検定の基本と解き方:サイコロ問題の例を使って解説

大学数学

仮説検定は統計学でよく使用される手法で、ある仮説が統計的に正しいかどうかを確かめる方法です。この問題では、サイコロを720回振ったときに、1の目が137回以上出たというデータに基づいて、1の目が出やすいかどうかを仮説検定を使って判断します。

1. 仮説検定の基礎

仮説検定には、帰無仮説(H₀)と対立仮説(H₁)が必要です。ここでは、1の目が出る確率が1/6(サイコロの理論的な確率)であるという帰無仮説H₀と、1の目が出やすいという対立仮説H₁を立てます。仮説検定では、これらの仮説が統計的に有意かどうかを調べます。

有意水準5%(α=0.05)で、統計的に有意であれば、帰無仮説を棄却します。つまり、データが帰無仮説に反している場合に、帰無仮説H₀を棄却し、対立仮説H₁を採択します。

2. 問題設定と適用する統計量

問題においては、サイコロを720回振って、1の目が137回出たというデータがあります。この時、1の目が出る確率が1/6であると仮定した場合に、1の目が137回以上出る確率を求めます。

サイコロの理論的な確率は1/6であり、720回の試行における1の目が出る回数は、二項分布に従います。しかし、大きなサンプルサイズ(720回)では、二項分布を近似するために正規分布を使用できます。これに基づいて、標準正規分布を使用して検定を行います。

3. 計算方法:Z値の算出

まず、理論的に1の目が出る回数の期待値(平均)と標準偏差を求めます。

  • 期待値(μ)= 720 × (1/6) = 120
  • 標準偏差(σ)= √[720 × (1/6) × (5/6)] ≈ 10.58

次に、Z値を計算します。Z値は次の式で求めます。

Z = (137 – 120) / 10.58 ≈ 1.61

このZ値は、標準正規分布において1.61以上の値がどれくらいの確率で起こるかを確認するために使います。

4. 棄却域と結論

有意水準5%の片側検定では、Z値が1.64以上であれば帰無仮説を棄却します。今回のZ値は1.61であり、1.64未満です。したがって、帰無仮説H₀は棄却されません。

この結果から、「1の目が出やすい」とは言えません。1の目が出る確率が1/6であるという帰無仮説を棄却できないため、1の目が特に出やすいとは統計的に言えないという結論になります。

5. 確率を使った方法と検定の違い

質問者が指摘しているように、Z値から直接棄却域を使う方法と、確率(面積)を使う方法は本質的に同じ意味を持っています。確率を求める方法では、Z値を使って確率(面積)を求め、その確率が有意水準を下回るかどうかを確認します。

仮説検定では、Z値から直接判断する方法でも、確率を求めて判断する方法でも結果は同じです。どちらの方法を使うかは、個人の好みによります。

6. まとめ

仮説検定は、ある仮説が正しいかどうかを統計的に判断するための重要な手法です。サイコロの例を通じて、仮説検定の基本的な考え方や計算方法を理解できたと思います。確率やZ値を使った方法を使いこなすことで、統計学の問題に取り組む際に役立てることができます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました