寺山修司の短歌「海を知らぬ少女の前に麦藁帽我は両手を広げていたり」の解釈と表現技法

寺山修司の短歌「海を知らぬ少女の前に麦藁帽我は両手を広げていたり」は、彼の独特な表現力が光る作品です。この短歌での「我」とは麦藁帽をかぶっているのか、持っているのか、そしてその表現技法はどうなっているのかについて考察していきます。

「海を知らぬ少女の前に麦藁帽我は両手を広げていたり」の解釈

この短歌は、語り手が海を知らない少女の前に立ち、麦藁帽を広げた両手で差し出している様子を描いています。言葉通りに解釈するならば、語り手が麦藁帽を「かぶっている」というよりは、「両手に広げている」という意味で解釈されます。

この場合、語り手が「麦藁帽」をかぶるのではなく、広げた両手でその帽子を少女に見せる、または差し出しているという形になります。これは「我は両手を広げていたり」との表現からも明確です。

「我は両手を広げていたり」の解釈

「我は両手を広げていたり」という部分が示すように、語り手は自分の手を広げて何かを示す動作をしています。この動作は、少女に対して何かを伝えたり、または何かを共有しようとしているという象徴的な意味を持つことが考えられます。

この動きによって、麦藁帽を「持っている」とも取れるかもしれませんが、動詞が「広げている」となっているため、物理的に手に持っているのではなく、広げた手の中で帽子を見せる行動として解釈することが自然です。

表現技法とその象徴性

寺山修司の短歌における表現技法は、直接的な描写だけでなく、象徴的な意味合いを強く持っています。この短歌では、麦藁帽が一種の「象徴」として使われており、無垢さや田舎的な素朴さ、または海を知らない少女への幻想的なアプローチが感じられます。

また、「海を知らぬ少女」という表現は、未開の世界への無垢な接近を示唆しており、麦藁帽を広げた手の動きはその無垢な世界に向かって差し出される「物」として機能しているとも言えます。このような表現は、視覚的な動きと精神的な象徴を結びつける技法として非常に効果的です。

「海を知らぬ少女」と麦藁帽の象徴性

「海を知らぬ少女」という表現は、未経験、無垢、無知という側面を持つ人物像を浮かび上がらせます。その前に立つ「麦藁帽を広げた我」という姿は、経験や知識を象徴する存在として解釈できるかもしれません。

このような象徴的な意味合いを含むことで、寺山修司は物理的な描写を超えて、感情や思想を強く表現しているのです。麦藁帽という具象物を通じて、何かを伝えようとする語り手の姿勢が浮き彫りになります。

まとめ

寺山修司の短歌「海を知らぬ少女の前に麦藁帽我は両手を広げていたり」において、「我」は麦藁帽を持つのではなく、両手を広げてその帽子を差し出しているという解釈が適切です。この表現には、象徴的な意味が込められており、無垢な少女への接近を示す重要な技法として機能しています。また、寺山修司が用いる象徴的な表現方法は、物理的な動きと精神的な意図を結びつけ、深い感情や思想を伝える力を持っています。