数学の学習でよく現れる「その関数×その導関数」の積分は、仕組みを一度つかめば一気に楽になります。本記事では、例として∫tanx(tanx)′dxが1/2·tan^2x+定数になる理由を、置換積分と微分の連鎖律(チェーンルール)の“逆向き”から丁寧に解説し、似た型の積分へも拡張できるよう体系化します。
結論に至る考え方:f(x)·f′(x)型の積分は1/2·[f(x)]^2
基本公式:関数g(x)について、∫g(x)g′(x)dx=1/2·[g(x)]^2+C。これは微分の連鎖律の逆利用です。なぜなら、d/dx{1/2·[g(x)]^2}=g(x)g′(x)が恒等的に成り立つからです。
この視点は、教科書的には置換積分の特例とみなせます(u=g(x)とおく)。置換積分とチェーンルールの関係は基礎項目なので、より詳細は「置換積分」「連鎖律」などの解説を参照してください([参照]・[参照])。
具体例:∫tanx(tanx)′dxが1/2·tan^2xになる手順
ここでのg(x)はg(x)=tanx。するとg′(x)=(tanx)′=sec^2xです。よって積分対象はtanx·sec^2x。
置換積分でu=tanxと置けば、du=(tanx)′dx=sec^2x dx。したがって∫tanx·sec^2x dx=∫u·du=1/2·u^2+C=1/2·tan^2x+C。微分してチェックすると、d/dx{1/2·tan^2x}=tanx·sec^2xで一致します。
よくある疑問への回答:「その数×その数の微分の積分=その数の積分?」
誤解を解きましょう。∫g·g′dxはgの積分ではなく、1/2·g^2になります。つまり「その数×その数の微分」の形なら「その数の二乗を1/2掛けたもの」に帰着します。
直感のメモ:g^2の微分は2g·g′なので、逆にg·g′の積分は1/2·g^2と覚えておくと、暗記負担がぐっと減ります。
横展開:同じ発想で一気に解ける代表例
(1)∫x·1 dx=1/2·x^2+C —— ここではg=x, g′=1。いちばん素朴なケースです。
(2)∫sinx·cosx dx=1/2·sin^2x+C —— g=sinx, g′=cosx。もちろんg=cosx, g′=−sinxで-1/2·cos^2x+Cと書いても同値です。
(3)∫e^x·(e^x)′dx=∫e^x·e^x dx=∫e^{2x}dxですが、g=e^xと見ると1/2·(e^x)^2=1/2·e^{2x}+Cに直行します(微分で検算するとe^{2x})。
非該当の反例と注意点(ここでつまずかない)
・∫tanx dx≠1/2·tan^2x。これはg=tanx, g′が一緒にいないのでダメ。正しくは∫tanx dx=−ln|cosx|+C(=ln|secx|+C)。
・g·g′の「形」が重要。似ていてもg′·g′やg^2だけでは使えません。定数係数aが付くなら∫a·g·g′dx=(a/2)·g^2+C。
・置換の精度:ぴったりg′が無いときは、定数調整で合わせます。例:∫x·cos(x^2)dxはu=x^2, du=2x dxより(1/2)∫cosu du=1/2·sinu+C。
理解を固める即戦力の練習
練習1:∫(3x^2)(x^3+1)′dx。g=x^3+1, g′=3x^2だから、1/2·(x^3+1)^2+C。
練習2:∫lnx·(1/x)dx。g=lnx, g′=1/xなので、1/2·(lnx)^2+C。区間はx>0で考えるのが自然。
練習3:∫secx·secx·tanx dx=∫sec^2x·tanx dx。g=secxのときg′=secx·tanxなので、1/2·sec^2x+C。
関連知識:f′/f型はln|f|(混同しない)
もう一つの頻出パターン:∫f′(x)/f(x)dx=ln|f(x)|+C。これはg·g′型と並ぶ重要基本形です。
例:∫sec^2x/(tanx) dx=∫(tanx)′/(tanx) dx=ln|tanx|+C。場面に応じてどちらの型かを見分けましょう。
まとめ
∫tanx(tanx)′dxが1/2·tan^2xになるのは、微分の連鎖律を逆に使ったg·g′型の基本公式(∫g·g′=1/2·g^2+C)によるものです。置換積分u=g(x)で即座に導け、微分で検算して確かめられます。非該当の例(∫tanx dxなど)と区別しつつ、この型を見抜く目を鍛えれば、三角関数・指数関数・対数関数の多くの積分が一手で片づきます。
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